三谷幸喜『オンリー・ミー―私だけを』ウソとマコトの間
かたわらで文庫本を読んでいたカミサンが、ぶふっと吹き出して、「これ読んでみて」と差し出したのがこの本。
■感想
脚本家・三谷幸喜氏のエッセイ第一集。1993年ごろ、30代に入ったばかりの若き三谷幸喜が雑誌「とらばーゆ」に連載していたエッセイが中心になっている。
カミサンが吹き出したのは、CHAGE&ASKAに関する文章二篇。一本目のコンサート・ルポも、CHAGE&ASKAより観客の様子ばかり書いてあるという妙なエッセイなのだが、自分も吹き出してしまったのは二本目の方。
出だしでいきなり、
「彼らをここまで育てあげたものは、一体何なのだろうか、と改めて考えてみた。答えはすぐに出た。それは私だった。私抜きには、到底今の彼らはなかったはずである」
ってなんじゃこりゃ、という代物。
付記として、この文章を読んだ読者の反応が紹介されているのだが、そこまで読むともう吹き出さずにはいられない。
全体に、世の中のあれこれやらちょっとした体験などごく普通の題材について書かれた普通のエッセイのはずなのだけれど、読んでいるうちになんとなく違和感を感じてきて、思わず笑ってしまった自分に気づくことになる。小梅の雑記帳というblogで書かれている通り、
この程度の話 笑うもんか・・・だって電車の中だもの
ふっ 鼻で笑ってしまった・・・いかんいかん
ヤ・ヤバイ 顔が緩んだままだ・・・勘弁して〜だって可笑しいんだものー
という感じなのだ。
もう一つ、このエッセイ集の変わっているところは、ラストに「人物さくいん」というものが付いていて、ある人について書かれた部分がどのページか完全に把握できるようになっている点。
舞台のカーテンコールか映画のエンドロールみたい、ということもあるのだが、三谷氏の周辺の人々が警戒して、自分の書かれている部分をチェックしやすいように圧力をかけてつけさせたんじゃないのか?というくらい、まわりの人たちがいいネタにされているのである。