フィリップ・リーヴ『掠奪都市の黄金』
会社帰りに行きつけの本屋(信愛書店)にて購入。前作、『移動都市』が好感の持てる冒険SFだったので、安心して読めた。
初見の作家の作品の場合、読んでいてどうしても緊張してしまう。強いて原因を分析すれば、もし、自分の予想とまったく違う方向に話が進んだらどうしようとか、読む前・読んでいる最中に盛り上がった期待が裏切られたら悲しいとか。まあ、逆に意外性が無いと「スゴい!」ということにもならないわけだし、所詮、本、特にSFあたりガックリきても平均台から落ちる程度なわけだけれども……その点、シリーズものは、そういうこともなく買うのも読むのも気軽。シリーズが増えたり、ベストセラーに人気が集中したりするのは、そういう点からもなんとなくわかる。
- 作者: フィリップリーヴ,Philip Reeve,安野玲
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/12/12
- メディア: 文庫
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大戦争後の未来、都市は大小問わず移動都市となっており、お互いを資源と見なして喰い合い(本当に都市に巨大な口があって、他の町に食いついてしまう)生存競争を繰り広げている、という設定は荒唐無稽だが、スチームパンクっぽさもある描写がうまいせいか、あまり違和感が無い。宮崎駿風にアニメ化されたらいい雰囲気かも、などと思えてしまう。
その世界を舞台に、大都市ロンドンで育った好青年トムと辺境産まれでちょっと荒っぽいヘスターが繰り広げる冒険の第二弾……なのだが、トムとヘスターの二人組は相変わらずヒーロー・ヒロインっぽくない普通人で、トラブルに巻き込まれては逃げ出し、悪人に捕まっては逃げ出しの繰り返し。この主人公二人組の普通っぽさが、ストーリーに親しみを感じさせるところ。
周囲に大迷惑を振りまいた後、トムとヘスターの関係が雨降って地固まるの王道展開でまとまったものの、伏線張りまくりで本巻は終わり。あと2巻あるそうなので、のんびり続巻を待つとしよう。