メディヘン5

時々書く読書感想blog

長谷敏司『BEATLESS』 ラノベの王道と思ったらSFの王道だった

いやー、読み始めの印象と違って、ゴツい話だった。
頭に残ったキーワードは、アナログハック、自動化、フレーム問題、道具、といったところかな。

BEATLESS

BEATLESS

基本読書さんのこちらのレビューを読んで気になっていた。

自分はだいたい、熱い!・泣ける!といった感じの、どちらかと言うと感情過多で暑苦しいっぽい話が好きなもんで、

コメントアウト。正直な、理屈っぽく書かない感想を言えば、傑作だった!! 感動した!! 最後は風呂で読んでいたのだがそのおかげでぼろぼろ泣きながら読んだ。感動して泣いたのだ!

BEATLESS - 基本読書

なんていうか、燃えるんだよ!! 中二病だから燃えるんだよ!!

なんて書かれると、もうたまらない。


で、SF BOOK MUSEUMに行った際、平積みで積まれていた表紙のカッコ良さがダメ押しになって、購入決定。

前に、「あたなのための物語」を読んで、重苦しさと緊張感に引きこまれた経験から、ハードカバーを買っても失望することにはなるまいという著者への信頼感があったこともある。

あなたのための物語 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

読後の印象は、やはり、熱かった!燃えた!

ストーリーの基本ラインは、高校生の主人公が美少女アンドロイドのオーナーに選ばれ、世界と人類史を揺るがす大事件に参加することになる、というなんともありがちな展開なのだけど、「人類史を揺るがす」というところがSF的なミソ。

機械の発展が人間を越えた後どうなるかというテーマはSFでは珍しくもないものの、依存するか対立するか、いずれにせよ、機械は人間から見てストレスの源である、という話が多いだろう。

一方、それに対する少数派として、人も機械も合わせて一個の「人類文明」であり、その「文明」の総力を結集しなければ「宇宙」の巨大さに向き合うことはかなわない、という話をいくつも書いていたのが、小松左京。「すぺるむ・さぴえんすの冒険」とか『虚無回廊』とか……

すぺるむ・さぴえんすの冒険―小松左京コレクション (ボクラノSF 4)虚無回廊〈1〉 (ハルキ文庫)

BEATLESS』は、高度に発展したAIと半ばそれに依存した人間の相克に対する一つの回答が提示されて終わるのだけれど、結末に至って強烈に思い出したのが、その小松左京作品における「文明」対「宇宙」のスケール感。少年と少女が手を取り合って臨む道のりの遥かな広がり、というか……青春の美しさと同時に、小松作品を読んだ時に類する壮大な感覚を覚える、熱い読後感だったわけです。ああ、SFを読んでてよかった、みたいな。

まあ、カバーもかけずに通勤電車の中で読むのは、ちと恥ずかしかった、けどね。

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