ケイジ・ベーカー『黒き計画、白き騎士』感想 カリフォルニア歴史観光SF
ネットで見ていたらおもしろそうだったので。
タイムトラベル+秘密結社→歴史に潜む謎と陰謀、というと際物っぽいのだけど、それが高い評判とどう結びつくのか興味があった。
黒き計画、白き騎士: 時間結社〈カンパニー〉極秘記録 (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: ケイジベイカー,Sparth,Kage Baker,中村仁美,古沢嘉通
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/12/07
- メディア: 文庫
- クリック: 14回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
というわけで、読み始めたのだけど、この短編集だけだと、あんまりタイムトラベルものっぽくも、秘密機関エージェントものっぽくも無かった!ぜひ、シリーズの他の作品(特に長編)を出して欲しい。アレックが登場する何本の作品なんか、この短篇集だけだと意味がわからなすぎる。
まあその分、著者の小説家としての力量が感じられて、SF小説の作品集としておもしろかった。不老不死の超存在と歴史に埋もれていく人間たちの交歓やすれ違い、謎の組織の滑稽さや組織と個人のぶつかり合いなどなど。
また、著者はカリフォルニアで生まれ暮らした人のようだけど、そのカリフォルニアへの愛情が込められた舞台描写がなかなか。カリフォルニアと言っても、大都市周辺の観光名所などではなく、忘れられかけている歴史や美しい自然を描き、ちょっとした歴史観光案内のようでもある。
そういうわけで、各作品の舞台となっている場所をGoogle Mapにプロットして、現在の姿を辿りやすくしてみた。
より大きな地図で 『黒き計画、白き騎士』カリフォルニア地図 を表示
- フォートロス / フォート・ロス州立歴史公園
- 「カルーギン博士の逮捕に関連する事実について」
- Fort Ross State Historic Park
- ビッグサー
- 「オールド・フラット・トップ」
- Wikipedia ビッグサー
- モントレー / Robert Louis Stevenson House
- 「リテラリー・エージェント」
- Robert Louis Stevenson House
- ピズモ・ビーチ
- 「レムリアは蘇る!」
- pismobeach.org
- カタリナ海峡/サンタ・カタリナ島
- 「グラッドストーン号の遭難」
- 登場する島がどこかはわからない。舞台となっているカタリナ海峡はサンタ・カタリナ島と本土の間の海峡らしい。
- サンタモニカ
- ジェイドビーチ
- 「スタジオの便利屋、マリブの海に消ゆ」
- Jade Beachというのは見つからない。まあ、ここらあたりの「秘密の砂浜」だろうということで、Jade Cove。ビッグサー付近の海岸では、翡翠(jade)がとれるところがあるらしい。
- ハーランズ・ランディング
地図にプロットしてみると、この短篇集の作品の多くは、北カルフォルニアの州道1号線沿いの場所が多いことがわかる。カリフォルニア州道1号線というのは、カリフォルニアの海岸線を延々と走る幹線道路で、ロサンゼルス・サンフランシスコ間を結んでいるし、サンフランシスコから北へ向かえばオレゴンに至る。LA-SF間には、他にインターステートハイウェイ5号線という立派な高速道路が走っていて、急ぐ人はこちらを使うのが普通。1号線は、海岸線沿いだけあって眺めはいいが、道は狭いしグネグネしていて、観光用、という話を聞いたことがある。
私自身、カルフォルニアにはちょいとご縁があって、サンフランシスコ南のモントレーやその周辺の1号線はドライブしたことがあるのだけれど、確かにきれいなところで、良い思い出になっている。
だもんで、この短篇集の作品を読みながら、現地の光景を想像していたりしていたんだけど……こういうの読むと、また行ってみたくなるなぁ。