メディヘン5

時々書く読書感想blog

海外SF

感想:アダム・ロバーツ『ジャック・グラス伝』

ミエヴィルもストロスも日本では当分新作が出そうに無い、しかし何か(近年の)英国SFが読みたい……ということで、名前は聞くけど読んだことのない作家であるアダム・ロバーツの本書を注文した。読んでみたら、英国SF云々とは別の意味で、大変、面白かった。…

感想:ジャック・ヴァンス『奇跡なす者たち』

国書刊行会<未来の文学>シリーズの一冊として出版されたジャック・ヴァンス傑作選。朝倉久志氏の遺訳5編(うち初訳2編)を含む全8編を収録。既訳作品も全て全面改訳、16ページもあるヴァンス評伝+収録作解題+ヴァンス全著作リスト8ページという豪華版「…

感想:C.L.ムーア『シャンブロウ』

なぜか忘れがたいノースウェスト・スミス。シャンブロウ、ノースウェスト・スミス、「地球の緑の丘」といった単語が基礎教養のように感じられるのは、思春期に野田昌宏氏のスペースオペラ話を読んで育ったからかも。一作目の「シャンブロウ」(1933)から最…

感想:『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』 アマル・エル=モフタール,マックス・グラッドストーン

読む前の期待が膨らんでいたのだが、それを裏切られず満足。とにかくどこもかしこもエモいエモSFだった。こうしてあなたたちは時間戦争に負ける (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5053)作者:アマル・エル=モフタール,マックス・グラッドストーン早川書房Amazonま…

感想:ケイト・ウィルヘルム『鳥の歌いまは絶え』

名訳タイトルが心に刺さるディストピアSFの名作。 破滅から逃れるため生み出され高度な共感能力で排他的に結び付くクローンたちと、様々な経緯で「個」として生きるしかなくなった人々の相克が三部に渡って描かれる。個と集団の葛藤というのは、アメリカ建国…

感想:マーサ・ウェルズ『マーダーボット・ダイアリー』

弊機、という一人称が発明されたという紹介を読んで、一発で読みたくなった。他人の行動がうっとおしくて、見られたり触られたりするのが嫌。好きなのはドラマを視ることだけで、知っている常識はドラマから学んだことだけ。ってまるで、***のことみたい…

チャイナ・ミエヴィル『言語都市』感想

『ペルディード・ストリート・ステーション』『都市と都市』の2作を楽しませてもらったチャイナ・ミエヴィルの新刊。これを読まんでどうする、ということで、発売前からhonto.jpで予約して購入。まあ、hontoのポイントの期限が切れそうだったからだけど。言…

ハンヌ・ライアニエミ『量子怪盗』 感想 

読みたい/読まなきゃいけない本が溜まっているので、この本は昨年出たとき以来スルーしてきた。しかし普段読ませていただいてる書評系のblog複数での好評価を見て、どうしても気になったので結局、購入。Kindle版も出ているけど、ここは紙版を購入。銀背から…

ケイジ・ベーカー『黒き計画、白き騎士』感想 カリフォルニア歴史観光SF

ネットで見ていたらおもしろそうだったので。 タイムトラベル+秘密結社→歴史に潜む謎と陰謀、というと際物っぽいのだけど、それが高い評判とどう結びつくのか興味があった。黒き計画、白き騎士: 時間結社〈カンパニー〉極秘記録 (ハヤカワ文庫SF)作者: ケイ…

チャイナ・ミエヴィル『ペルディード・ストリート・ステーション』『都市と都市』感想

カミサンとジュンク堂本店のSFブックミュージアムに行った際、「そういえばこれはエラく評判が高かったようだぞ」と思って買ったのが『ペルディード・ストリート・ステーション』。この作品については、このblogの中断前の最後の記事、『SFが読みたい!』201…

SFマガジン編集部編『SFが読みたい! 2010年版』

今年の『SFが読みたい!』は、なかなか読み応えがあって、得した気分。SFが読みたい!〈2010年度版〉発表!ベストSF2009 国内篇・海外篇作者: SFマガジン編集部出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2010/02メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 88回この商品を含…

フリッツ・ライバー『跳躍者の時空』感想

ライバー! 高い期待を裏切らない高い満足感。奇想コレクションの中でも、特にお気に入りの1冊になりそう。跳躍者の時空 (奇想コレクション)作者: フリッツ・ライバー,中村融出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2010/01/21メディア: 単行本購入: 4人 ク…

SFマガジン編集部編『SFが読みたい! 2009年版』

SFが読みたい! 2009年版―発表!ベストSF2008国内篇・海外篇 (2009)作者: SFマガジン編集部出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009/02/11メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 19回この商品を含むブログ (45件) を見る今年はベストSF上位10作品のうち、国内4作…

ロバート・チャールズ・ウィルスン『時間封鎖』

ネットでも好評のようだということで気になっていて、いつも本屋で手に取ってみてはいたものの、1冊約1,000円×上下2冊という値段にレジに持って行くのを躊躇していたのが本書。値段もだけど、「謎のフィールドに囲まれて星々の光が見えなくなる」というシチ…

ギブスン&スターリング『ディファレンス・エンジン』 シンギュラリティ/サイバーパンク/歴史改変

ウィリアム・ギブスンもブルース・スターリングも黒丸尚も大好きなのに、 ハードカバーを買い逃して長らく未読だった『ディファレンス・エンジン』。文庫で復刊なんて、こいつはラッキー! 一通り読んでもちろん満足したものの、ネット上での言及を読んで行く…

創元文庫創刊50周年記念 復刊リクエスト募集

悪漢と密偵さんの記事で知る。 2009年、東京創元社は文庫創刊50周年を迎えます。これを記念して、弊社では読者の皆さまからリクエストを募っての文庫復刊を企画しています。<略>■リクエスト受付締切 2009年2月末日 東京創元社|文庫創刊50周年記念 復刊リ…

アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』 で、思い出すのは・・・・・・

虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)作者: アルフレッド・ベスター,寺田克也,中田耕治出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2008/02/22メディア: 文庫購入: 21人 クリック: 197回この商品を含むブログ (195件) を見るう〜ん、やはり名作。 何度目かの再読なの…

リドリー・スコットが『終わりなき戦い』を映画化?!

リドリー・スコット監督が『エイリアン』と『ブレードランナー』以来、26年ぶりにSF映画に挑む。フォックス2000が権利を獲得した、1974年のジョー・ホールドマンのSF小説「終りなき戦い」のメガホンをとる予定だ。 Variety Japan おー!ジョー・ホールドマン!…

マイクル・コーニイ『ハローサマー、グッドバイ』続刊も出してよプリーズ!

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)作者: マイクル・コーニイ,山岸真出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2008/07/04メディア: 文庫購入: 33人 クリック: 972回この商品を含むブログ (211件) を見るじっくり味わいたい本が何冊も出版されているのに、読…

ショート・ショート2編

ネットで見つけたもの。 あたしスポック - World Wide Walker 「論理的にかんがえて」で吹き出した。こういうの読むとスタトレ見たくなっちゃっうなぁ。元ネタの方は全部読む気力がわかないんだけど、現代語訳を読むとフツーにいい話。 ふと思いついた妄想 …

ジョン・スラデック『蒸気駆動の少年』 勝手に集計・ベスト収録作品

蒸気駆動の少年 [奇想コレクション]作者: ジョン・スラデック,柳下毅一郎出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2008/02/19メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 48回この商品を含むブログ (49件) を見るいやー、おもしろかった。もう、2008年上半期マイベス…

クリストファー・プリースト『限りなき夏』

6月に読んだんですが、すっかり感想を書くのが遅くなってしまった。限りなき夏 (未来の文学)作者: クリストファープリースト,Christopher Priest,古沢嘉通出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2008/05/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 40回この商品を…

野田昌宏氏逝去の報にふれて

数々のエッセイとか、<銀河乞食軍団>や『レモン月夜の宇宙船』、『あけましておめでとう計画』といったあたりが頭をよぎったわけですが。一番の強く思い出したのは、A. バートラム・チャンドラーの<銀河辺境シリーズ>というか、<ジョン・グライムズ>シ…

エリザベス・ベア『HAMMERED』『SCARDOWN』『WORLDWIRED』<サイボーグ士官ジェニー・ケイシー>

あらすじ 舞台は、資源枯渇と環境破壊で世界が傷ついた近未来。ヒロインのジェニー・ケイシーは、第三世界でのPKFに従軍し傷ついた体をサイボーグ化された退役兵士。痛む体をかばいながらニューヨーク近郊のスラムで暮らしていた彼女は、故郷カナダから軍務…

アーサー・C・クラーク逝去。

いつも拝見しているblog各所の記事で知りました。SF作家のアーサー・C・クラーク氏が死去--「2001年宇宙の旅」など作品多数@C-NET あぁ、ついに、その日が……この巨匠の作品に思い出を持つ方は多いでしょうね。

ゼナ・ヘンダースン『ページをめくれば』

ページをめくれば (奇想コレクション)作者: ゼナ・ヘンダースン,安野玲,山田順子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2006/02/21メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (49件) を見るゼナ・ヘンダースンと言えば、<ピープル>シ…

ハーヴェイ・ジェイコブズ他『グラックの卵』浅倉久志編訳

積読積滞本の1冊。グラックの卵 (未来の文学)作者: ハーヴェイジェイコブズ,Harvey Jacobs,浅倉久志出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2006/09/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (33件) を見る浅倉久志選による<ユーモアSF…

SFマガジン編集部編『SFが読みたい! 2008年版』

ベストセラー・リストとあまり縁の無い読書生活を送っていることもあって、この手の本(?)は買ったことがなかった。しかし、これだけblogで触れられていると、やっぱり気になって購入。表紙の「早川さん」効果もあるかな……購入したのは出張帰りの羽田空港。第…

アイリーン・ガン『遺す言葉、その他の短篇』

一年越しの積読本。表紙の少年がちょっと不気味。遺す言葉、その他の短篇 (海外SFノヴェルズ)作者: アイリーンガン,Eileen Gunn,幹遙子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2006/09メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (42件) を見る ウィリア…

デイヴィッド・ウェーバー『反逆者の月2―帝国の遺産―』 戦艦はぁとてもでかい〜

仕事が行き詰まってイライラする→帰宅の途中で行きつけの本屋に寄る→そういう時は気晴らしにスペオペだぁ!というパターンで購入。出だしの「イライラする」というのは大変良くあることなので、“スペースオペラばかりの古本屋”なんていうものがあったらエラ…