伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』 謎が残るのは私だけ?
- 作者: 伊藤計劃,円城塔
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2012/08/24
- メディア: 単行本
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エピローグまで読み終わっての感想は、やはりこれは「伊藤計劃のことを忘れないために」計画だなぁ、ということ。
だって、実質的なあとがきと読めるエピローグ後半や、出版社サイトに掲載された著者・編集者のコメントなど、セットアップが強烈すぎる。結果論だろうけど、円城塔の芥川賞受賞により、SFやゲームの世界に閉じていた伊藤の名が一般の目に触れることにもなった。
これで、この作品が日本SF大賞(それも特別賞とか)でもとれば、”正史”にも記録されることになり、完璧だよなぁ。
もちろん、それで何かまずいということはない。私も喜んで、この計画に参加したい。
作品の内容も言うことなしに楽しめました。
魅力的な設定とストーリーの展開はもちろん、楽しかったのは、19世紀の世界をまたにかけて続く主人公たちの旅。陰謀を追っかけつつ世界各地の風物を楽しめるというのが、007映画シリーズの魅力の一つであり、そのあたりをうまく取り込んでいるのも、本作品の魅力の一つでしょう。
ただですね。この作品、仕掛けがハンパないわけです。私の知識やら読解力やらの不足で、どうもわからないところがいくつかあって、それが、いまだに尾を引いている。疑問に思うこと自体が見当違いな、意味のないところに引っかかっているような気もするのだけど、どうも気になる。*1
最初、教養不足の私にはカラマーゾフの兄弟がなぜ登場するのかもわからず、ハテナマークが頭の中を飛び交いました。しかし、これはインターネットという偉大な発明のおかげをもって一応、解決。『カラマーゾフの兄弟』には、約束されつつ書かれなかった第2部がある、と。私の単純な頭脳にとっては、これで十分。伊藤計劃氏の作品に第2部が約束されたものがあるかどうか知りませんが、『屍者の帝国』という作品の書かれた経緯を顧みれば、察しろよ、お前、ということでOK。なるほどなぁ、と。後でカラマーゾフに関する理解が増せば、この照応は、ますます作品からの楽しみを増やしてくれることになるのでしょう。
ところが、よくわからない点がまだまだ、いくつもある。わかれば、きっと「なるほど!」と楽しめるんだろうと思うと、気になって仕方が無い。
以下、そういう疑問点を書いてみます。
(ネタバレになります)
*1:楽しみが長引いているとも言う