メディヘン5

時々書く読書感想blog

2021-01-01から1年間の記事一覧

読書メモ:アーシュラ・K・ル=グウィン『ファンタジーと言葉』

ル=グウィンによる物語論・創作論を中心としたエッセイ集。原書は2004年刊行(著者75歳、《西のはての年代記》三部作刊行開始前後のタイミングか)それほど思い入れがある人では無いし、自分自身は創作しようというタイプでもないのだけど、読み流すには惜し…

感想:アダム・ロバーツ『ジャック・グラス伝』

ミエヴィルもストロスも日本では当分新作が出そうに無い、しかし何か(近年の)英国SFが読みたい……ということで、名前は聞くけど読んだことのない作家であるアダム・ロバーツの本書を注文した。読んでみたら、英国SF云々とは別の意味で、大変、面白かった。…

感想:ノーマン・マクレイ『フォン・ノイマンの生涯』

フォン・ノイマンというと、長い間、現在のコンピューターを定義したとも言えるノイマン型アーキテクチャの提唱者としてしか知らなかった。しばらく前、フリーマン・ダイソンの息子ジョージが書いた『チューリングの大聖堂』を読み、計算機分野に収まらない…

感想:新城カズマ『月を買った御婦人』伴名練編

ラノベ作家として知られる新城カズマ氏のSF系短編10編を集めた作品集。「日本SFの臨界点」というアンソロジーテーマに、ハヤカワ文庫JAなのに真っ赤な背表紙と気合い入りまくり。『サマー/タイム/トラベラー』から読み始めたニワカなので、編者・伴名練によ…

感想:ジャック・ヴァンス『奇跡なす者たち』

国書刊行会<未来の文学>シリーズの一冊として出版されたジャック・ヴァンス傑作選。朝倉久志氏の遺訳5編(うち初訳2編)を含む全8編を収録。既訳作品も全て全面改訳、16ページもあるヴァンス評伝+収録作解題+ヴァンス全著作リスト8ページという豪華版「…

感想:C.L.ムーア『シャンブロウ』

なぜか忘れがたいノースウェスト・スミス。シャンブロウ、ノースウェスト・スミス、「地球の緑の丘」といった単語が基礎教養のように感じられるのは、思春期に野田昌宏氏のスペースオペラ話を読んで育ったからかも。一作目の「シャンブロウ」(1933)から最…

感想:『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』 アマル・エル=モフタール,マックス・グラッドストーン

読む前の期待が膨らんでいたのだが、それを裏切られず満足。とにかくどこもかしこもエモいエモSFだった。こうしてあなたたちは時間戦争に負ける (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5053)作者:アマル・エル=モフタール,マックス・グラッドストーン早川書房Amazonま…

感想:ヘンリー・ジェンキンズ『コンヴァージェンス・カルチャー』

90年代の米国ファンダム文化研究の延長としてインターネット時代初期のファン参加型コミニュティの実相を渉猟し、メディアとファンの関係変化の様相を報告。主に取り上げられているコンテンツ=コミュニティは、『サバイバー』『アメリカン・アイドル』『マ…

感想:高山羽根子『暗闇にレンズ』

「暗闇にレンズ」が浮かんで見つめているというイメージが不穏。一人称の女子高生パートのSideAと明治時代から始まる母娘たちの映像に関わる人生を追うSideB、いずれもレンズという「眼」を意識するとやはり不穏さが募って展開にハラハラさせられる。さらに…

感想:ジェイコブ・ソール 『帳簿の世界史』

人類の歴史の中でも、これほど進歩が遅い技術分野は珍しいのでは。「すばらしく輝かしく、途方もなく大変で、圧倒的な力を持ち、しかし実行不能」(ディケンズ)という帳簿・会計の歴史をたどると、会計をうまく扱って成功するには生活・文化の一部に溶け込…