メディヘン5

時々書く読書感想blog

町井 登志夫『爆撃聖徳太子』 絶叫厩戸皇子

知らない作者だし、普段、こういうタイトルの小説は(なんかいかがわしくて ^^;)買わないのだが、記念すべきbk1への初注文の際に「SF」のページで紹介されていたため、ふと購入。平積みを手にとって、ついつい買ってしまうようなものか。

爆撃聖徳太子
爆撃聖徳太子
posted with 簡単リンクくん at 2006. 7.25
町井 登志夫著
角川春樹事務所 (2004.2)
通常1-3週間以内に発送します。

■あらすじ

「日出ずるところの天子、日没するところの天子に書を致す」物語は、この有名な文句からスタート。相手を見下したこの文章、当時の大征服帝国・隋から見れば、まさに噴飯もの。なぜ聖徳太子はこんな文書を送ったのか。多数の伝説が残る聖徳太子に公的な事跡の記録が少ないのはなぜか。それは彼が、大帝国・隋との戦いの日々を送っていたため。かなりキている厩戸皇子と真面目な小野妹子が、南海から北の果てまで駆けめぐる一大架空戦記アクション。

■感想
お茶目なタイトルと、タイトルのイメージ通りの奇人として描かれた厩戸皇子像にも関わらず、読後感はかなりまとも。こういう解釈をすれば、確かに、聖徳太子の伝説や謎も解けるのかもしれない、などと思わされてしまった。もちろん、冒険や戦いの描写は想像力を思う存分羽ばたかせたものであり、そちらの点も楽しめた。特に、高句麗における攻城戦の場面は、人海+物量戦術で押し寄せる隋帝国軍 VS 知恵と勇気で一歩も引かぬ高句麗軍の攻防を、高句麗軍と共に奮戦する小野妹子の視点から描いて圧巻だった。

本作品では、日本よりも隋に光があてられている。真面目な話、歴史を習うとき日本史・世界史で分けられてしまうこともあって、日本の歴史と中国、朝鮮半島の歴史が頭の中でリンクしなかったりする。しかし、考えてみれば、古代の東アジアにおいては中国こそが歴史の要であり、中国の動きに応じて周辺国の歴史が紡がれていたかもしれない。この『爆撃聖徳太子』は、頭ではなんとなく理解できても認識が追いつかない、中国を中心とする古代東アジア世界観を整理して見せてくれて新鮮だった。それとも、この中国を中心に置く歴史観は、アメリカの動きが気になってしかたがない現代人の思い込みによるものだろうか。