A. E. ヴァン・ヴォクト『宇宙嵐のかなた』
1970年にハヤカワSF文庫第一回配本作の一つとして出版された作品の再刊。
こういう、購買層を当てこんだような企画に乗るのは業腹だが、SF文庫自体がなくなっちゃたらエライことだと、ついつい買ってしまう今日この頃。
まあ、読めば楽しいので、いいんですが。
■感想
一読した印象は、まさに博物館級スペオペだなぁ、というもの。
博物館級、というのは、自然史博物館ならぬSF史博物館なるものがあったとすれば、SFの歴史を彩る作品として展示する価値は十分あるのではないでしょうか、という意味。
古いという意味では確かに古い。なんせ、タイトルからして「宇宙嵐」だし。しかし、古いから即、ジャンク、というわけではない。破天荒なアイデアを盛り込みながら、ストーリーを二転三転させ、ラストまでグイグイ読ませるところは、さすが再刊されるだけのことはある、と思わせられた。
とは言え、古典的傑作、殿堂入り……とまで言えるかどうか。ヴォークトの代表作というと『宇宙船ビーグル号の冒険』か“非A”シリーズだと思うのだが、これらが絶版状態の現在、ヴォークトの代表作が再刊されたぞバンザイとは言いがたい。そういう意味で、殿堂級ではなく博物館級と言いたい。
というわけで、オチは、創元さんにも『ビーグル号』と”非A”の再刊してもらいたいよ〜、ということになるわけでした。
■関連リンク
★『宇宙嵐のかなた』@FREIHEITSTROM
あれからだいぶ時間がたって、再びヴォークトの作品を読む機会を得てみると、やはり古めかしいという印象は変わらないのだけど(そりゃそうだ)、1点軽く驚いたことがあって、それはこの作品のヒロインがツンデレということだった。それにしても「大艦長」ってなんとかならなかったのでしょうか。
ふむふむ、なるほどなぁ、と読ませていただいたレビューの中で、思わず笑ってしまったくだり。ペーリー・ローダンの最初の奥さんのトーラとかもいたなぁ。
★宇宙嵐のかなた@えすえふ・いず・わんだふる
斎藤和明氏による、パルプ調というか、バーバレア調なグロリア大艦長イラストのオリジナル表紙掲載。