ウェン・スペンサー『ティンカー』 しっかりアマゾン・ファンタジー
最近ハヤカワSF文庫から出てくるアニメ絵っぽい表紙のヤツには、どうも違和感を感じてしかたがない。この作品にも疑いの視線を向けつつ読んでみたけど、まあ、いいんじゃない?という感じ。続編が翻訳されたらたぶん買うでしょう。
この作品を読んで思い出したのは、アン・マキャフリー『銀の髪のローワン』とか、コニー・ウィリス&シンシア・フェリス『アリアドニの遁走曲』とか、ファンタジーだけどL. M. ビジョルド『スピリット・リング』とか。
いずれも、周囲から大切に育てられた生意気盛りの天才少女が、ハンサムな男性に出会って反発しながら飛び回り、最後は恋も冒険も大団円というお話。こういうタイプの作品は“アマゾン・ファンタジー”と言うのか。親によるジェンダー形成圧力。ハンサムでやさしかったり、ガサツで乱暴だったりするけど、結局自己中心的な男たち。ヒロインを大ピンチに追い込む悪漢ども。アメリカの女流SF作家の芸風の一つですね。この『ティンカー』もまさしく、このパターンそのもので安心して楽しめたのでありました。作者のウェン・スペンサーも、ここで名前をあげた作家さん達のようにメジャーになれるといいね。