メディヘン5

時々書く読書感想blog

フィリップ・ホセ・ファーマー『緑の星のオデッセイ』 落丁ぅ〜〜?!

以前、会社が早く引けて荻窪ささま書店に寄った際に買った本。

この、ささま書店と言う古本屋がなかなかの癖もの。荻窪あたりの古本屋としては、結構広い方で品揃えも豊富であり、ファンも結構いるらしい。はてなダイアリーにもキーワード登録されている(ささま書店とは - はてなダイアリー)し、荻窪の古本屋について書かれた文章ではしばしば目にする古書店なのである。

自分的には、SF系も含めた文庫本が咒実している点がポイント。常時、書棚二、三段分はハヤカワの白背やら創元SFの古いヤツやらが並んでいて、立ちよると必ず2、3冊購入してしまう。先日は、「そう言えばなぜか書棚に無いんだよな」と<ノースウェスト・スミス>もの三冊を購入したし、この『緑の星のオデッセイ』を買った際には、昔図書館で借りて読んだだけの『テクニカラー・タイムマシン』も一緒に買わせてもらった。

緑の星のオデッセイ
フィリップ・ホセ・ファーマー
/ 矢野 徹訳
早川書房 (1980)
ISBN :
価格 : ¥357
この本は現在お取り扱いできません。

■あらすじ

とある未開惑星に遭難し、中世レベルの世界で辛い2年間を送ってきた主人公アラン・グリーン。ある日、“海”の彼方の都市に「空から来た人間」が捕われているという話を耳にする。捕まっている囚人は自分と同じ地球人だと直感したグリーンは、囚人たちを救出して彼らの乗ってきた宇宙船で帰郷するため、大“海”を渡う冒険に出た。彼の行手に待ち受けるのは、直径1万マイルにおよぶ広大な草原の草の“海”。草原を走る“帆船”に乗って船出したグリーンは、宇宙船を発見し、無事に地球に帰還できるのだろうか……

■感想

とにかく話のネタは、一にも二にも、「直径1万マイルの大草原」とそこを走る“帆船”の旅。緑の野をひた走る大帆船、というイメージにワクワクできるかで、この話を面白いと思うかどうか決まってくるんだろうと思うんだが……その“帆船”が登場し、主人公がその船に乗り組む肝心かなめのシーンを含む 16ページが、なんと落丁でしたよ、私めが買った古本は。まあ、書店さんとしても、一々文庫本の落丁なんかチェックしないのが普通と思うので、ささま書店を責める気はないのだけれど、読んでて愕然としたのは確か。

この落丁部分でかなりガックリ来たんだけれども、それを補って最後まで読む気を続けさせてくれたのは主人公の妻であるヒロイン。スペースオペラにせよファンタジーにせよ、異世界に漂着した主人公が冒険を繰り広げるうちに現地の美女と結ばれる、というのが一つの定番だと思うのだが、この『緑の星のオデッセイ』ではヒロインは既に主人公と結婚しており子供もいる、という珍しい状況で物語が始まる。しかも、ヒロインには主人公以外の男性との子供が5人もおり、完全な肝っ玉母さん状態で主人公を尻に敷きまくり。


当然、彼女は、遭難した惑星からだけではなく彼女自身からも逃げ出そうとする主人公グリーンを見過ごすはずはなく、子供達を連れて主人公とともに船の旅に同行してくることとなる。その旅の中で、主人公が「家族の絆」に目覚めていくあたりが、“船の旅”と裏表の関係となるもう一つの見所で、こちらはまぁ、楽しめた。全体に話の進み方や描写に時代を感じさせはするものの……