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時々書く読書感想blog

恩田陸『六番目の小夜子』 a boy meets a girl

『球形の季節』がおもしろかったので、続けて恩田陸の小説を読むことにした。最近の作品へ進むか(というか、どうもSFっぽい要素が強いらしい『光の帝国』を読むか)どうか迷ったのだが、『球形の季節』が第二作だということなので、折角だから有名なデビュー作の『六番目の小夜子』を読むことに。

で、買って帰ったのはいいんだけど、家族に見せたらムスメに「ウチにあるヨ」と言われたのはマヌケ。

六番目の小夜子
恩田 陸著
新潮社 (2001.2)
ISBN : 4101234132
価格 : ¥540
通常24時間以内に発送します。

■感想
ライトなエンターテインメントとしては『球形の季節』よりずっとおもしろかったというのが素直な感想。

おもしろかった一つ目の点は、やはり物語の中心にある「サヨコ伝説」の謎。サヨコ伝説を彩る形で、転校生・津村沙世子の謎であるとか、作中劇『六番目の小夜子』の謎であるとか、さまざまな仕掛けが膨らんでいき、もうグイグイと物語に引き込まれていく感じ。こうした謎の中には物語のラストまでに解かれるものもあるのだが、中心にある「サヨコ伝説」については、あからさまな謎解きは行われず、ある種のほのめかしが行われて物語は幕を閉じる(というか循環する)。

まあ、この「サヨコ伝説」というものは解かれるべき謎ではなくて、高校生活という時間が持っている不思議さやせつなさを表す象徴だということでいいんじゃないか、と。読み終わった直後は、「これは結構な時間テーマ小説だぁ」などと思ったりもしたが、そこまで大上段に振りかぶっているわけではないだろう。

いずれにせよ、「3年毎に表に出るサヨコ伝説の6回目は18年目、すなわち高校卒業の年」というような、ある種あからさまな仕掛けがあちこちにあって、その分「謎」の重みが軽くなっているように思えて、ちょっと残念。自分としては、読んだ後にズシンとくる感じは『球形の季節』の方が上だった。

さて、エンタメとしてより楽しめたのは、探偵役・関根秋と犯人役・津村沙世子のロマンス。まあ、ロマンスというかボーイ・ミーツ・ガールな話で、昔読んでた少女漫画を思い出して懐かしくも楽しい気分になってしまった。上手な漫画家さんにマンガ化して欲しいところだけど、“29年組”あたりとは学園生活の時代感が違いそう。吉田秋生じゃ『吉祥天女』そのものになっちゃうし、佐藤史生あたりでどうでしょうか。