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時々書く読書感想blog

ブログ記事改善のための読書メモ(Part 3完): 北村紗衣『批評の教室』、豊崎由美『ニッポンの書評』

『批評の教室』と『ニッポン書評』から自分のブログ記事の改善のために役立ちそうな文章の引用と自分の覚え書きを記録した読書メモ、Part 3は執筆の実際についてです。

執筆

タイトル

『ニッポンの書評』では書評のタイトルについてあまり述べていません。これは、書評のタイトルは編集者が決めることが多いからなのかもしれません。

一方、『批評の教室』では、明確に、最初にメインの切り口を一つに定めて、それに合わせたタイトルを決めて書くのがよい、としています。

初心者が批評を書く時に大事なのは、メインの切り口を一つにすることです。<略> 軸なしにいろんなことを書くと、判然としてまとまりがない感じになってしまいます。(『批評の教室』)

ひとつめはタイトルを決めると内容が決まることがあるということです。たとえば作品を見て疑問に思ったことがあり、それを解き明かしたい場合はとりあえず具体的な問いをタイトルにしてみましょう。(『批評の教室』)

自分のブログ記事の場合、著者名・作品名に「感想」とだけつけたり、記事内容を表す言葉をつけてみたり、タイトルの付け方が定まりません。今後は、『批評の教室』のおすすめに合わせて、記事内容を表す言葉=記事タイトルに著者名・作品名を足す形式にしてみようかなと思いました。

書き出し

記事の書き出し。これは悩ましいですよね。そもそも書き出せない、というレベルの問題もありますし、どのように書くと好意的に読んでもらえるかもわかりません。この難しさについては、『ニッポンの書評」でも次のように書かれています。

わたしが書評を書く時、一番気をつかうのは書き出しの部分(『ニッポンの書評』)

読者は最初の二、三行でその記事を読むかどうか判断する(『ニッポンの書評』)

そうだよなぁ、と思いつつ、ではどういう工夫をすればいいかが悩ましい。

『批評の教室』では、初心者はそこに悩むな、書き出しに悩んで時間を空費しても意味がない、まず作品の情報をサクッと書きなさいとしています。

私がおすすめしているのは、とりあえず作品の情報を簡単に書くところから始める、というやり方です。小説なら誰が書いていつ刊行されたとか、映画なら監督が誰で何年に公開されたとか、基本的な情報をまず書きます。(『批評の教室』)

それも、三文一段落くらいにとどめ、詳しい内容紹介は、本文の分析のなかで適宜触れていけばいい、というスタンスです。

文章の冒頭で行う作品の内容紹介は三〜五文程度の短い一段落か、ものによっては基本情報の段落に入れ込む一〜二文でもかまいません。おおよそどういう話かわかれば、他の細部を書く上で分析に必要なところを適宜出すというふうにすればよいのです。(『批評の教室』)

確かに、書き出しに悩んで妙な自分語りを始めても読む人にはピンとこないでしょうから、このアドバイスに従って書き出すのが難かもしれません。タイトルもそうですが、書き出したその後によいものを思いついたら変えればいいだけですし。初心者は、まずは書き出すことである、と。

本文

本文で書くべきことについて、『批評の教室』では色々解説されていますが、なるほどと思ったのは、

- 「感動した」「面白かった」「考えされた」といったぼんやりしたことを書くな、何にどう感動した・面白かった・考えされたかを書きなさい。

ということです。当たり前なんですけど、ついついこういう「ぼんやりした言葉」を書いちゃったりするんですよね。

では、どう書くかということについては、こう述べられています。

書き出しができたら、その後は切り口に沿った分析が必要です。中盤の段落で何を書けばいいのか……<略>とりあえずやってみるべきなのは、切り口を一段落くらいで提示することと、そしてその切り口を使った細かい台詞や場面の分析を示すことぐらいです。(『批評の教室』)

そしてやはり、触れたい場面一つを一段落に書き、一段落は三文程度で書くという形式がすすめられています。

価値づけを行う場合、一段落で「この作品にはこういう価値がある」とちょっと大迎にまとめるよりも、こういうふうにところどころで巧拙に言及するというようなやり方をとったほうが、批評全体を読んだ時に「何か面白そうな作品だな」と思ってもらえることもあります。人にすすめたい作品について批評を書くときは、さりげなくいろいろなところに価値づけを織り込むのも良いでしょう。(『批評の教室』)

確かに、良かったと思う他の方のブログ記事でも、「ところどころで巧拙に言及するというようなやり方」で書かれている文章にピンとくることが多い、という感覚はありますね。

あらすじと引用

作品紹介を書いたり、内容に触れていったりすると、どうしてもあらすじを書いたり引用したりということになるわけです。そのあらすじについて、『ニッポンの書評』では、

粗筋と引用の技にこそ書評家の力量は現れる。(『ニッポンの書評』)

と大事さと難しさについて触れています。

まず、一番大事なのは、未読の読書の興を削がないよう、初読の楽しさ・快楽を傷つけないよう細心の注意を払うこと。そして、その前提で、文字数を削りに削っていく。

どの引用を活かし、どの引用を捨てるのか。どのエピソードを残し、どのエピソードを落とすのか。この自分以外誰も知らない削る過程も、書評の”評”の大事な部分だとおもうんです。  削りに削った末に残った粗筋と引用。それは立派な批評です。逆にいえば、その彫刻を経ていない粗筋紹介なぞウンコです。(『ニッポンの書評』)

自分の記事では、あらすじについて悩んで、あらすじだけ独立したブロックにしたり、逆にまったくあらすじに触れなかったり定まりませんでした。

『ニッポンの書評』を読んだ印象では、やはり内容に触れるあらすじはあった方がいいのかもしれないと感じました。しかしそれは機械的な要約ではなく、前述の「ところどころで巧拙に言及するというようなやり方」の関連するような、工夫した書き方であるべきだ、というのが自分の現在の考えです。

結び、まとめ

文章の終わり方について、『批評の教室』では、批評理論に沿ったまとめ方をすすめています。ただ、そこまで大上段に書く対象・内容ではなければ、

一方で中くらいに面白かった作品は引っかかるところがなく書きづらいと思えることが多いです。そういう場合は何か一箇所だけものすごく細かいところに注目してそこだけについて書くというのが、私がよくやる解決法です。(『批評の教室』)

という解決法が示されています。『批評の教室』ではこの方法は、けっして推奨ではなく、ある種の逃げ道として書かれていますが、自分が書くような短文だと、自分のこだわりをとことん突き詰めるというやり方も有りのような気がしました。

文章の分量

『ニッポンの書評』では、国内の新聞や雑誌の書評コーナーが割り当てている記事ごとの文字数を調べています。その結果は600字から長くて1,200字(まれに1,600字)。著者が書評を依頼される際は、800字前後多いとのこと。

一方で、著者が書きたいことを自然に書くと1,600字から2,000字になるということで、そこから、文章の文字数を削るということについて強調されています。

書きたいことがたくさんあるのに、それらを泣く泣く切り捨てて書いた八〇〇字と、四苦八苦しながらようやっと埋めた八〇〇字とではまったくちがう。(『ニッポンの書評』)

四〇〇字なり八〇〇字なりに収めることを目標にすると、ぐっとちがってくる。この字数への意識が、ブログ書評全般に欠けているのかもしれません。(『ニッポンの書評』)

学校教育にかぎらず大人でも、字数制限つきの書評は、文章に客観性や論理性を確保するのにちょうどいい素材(『ニッポンの書評』)

ということで、「文字数を小さくまとめる」ということがすすめられています。ただし、それは、最初から文字数に合わせて書くということではありません。最初は、目標文字数の倍以上書く。そして、そこから削っていく、ということです。

コツとしては、常に目安の倍を泳ぐことですね。泳いでから無駄な動きをそいでいく。(『ニッポンの書評』)

自分は、最近、Obsidianを使うようになってから文章を書くのが楽になり、ついつい沢山書いてしまうようになりました。その結果、どうも文章にまとまりがないなと感じるようになってきたので、この、「倍書いて半分に削る」というやり方は、目からウロコでした。

2冊からの学び

『批評の教室』『ニッポンの書評』では、他にもさまざまな点から批評方法論と書評論について触れられていますが、自分のブログ記事の改善に役立てるたためのメモとしては、ここで終わりにします。

この2冊を読んで、今後の記事作成で意識しようと思って点は次のあたりです。

  • 既読者向けか、未読者向けか
    『ニッポンの書評』では、読んだ後に読むのが批評、読む前に読むのが書評、とされていますが、自分はこの点があまりに曖昧なまま記事を書いていました。感想を書きたいという意味では批評寄りなんでしょうが、ただでさえ読者人口が少ない海外SF中心に記事を書くとなると、未読者におすすめするというスタンスに割り切って工夫していった方がよいのかな、と感じています。

  • 自分なりの切り口を見つけるための精読と分析
    精読と分析というのは終わりのない作業で、どんどん積読を片付けていきたい自分はどう向き合うべきか、正直よくわかりません。しかし、これまで、描写であるとか、登場人物の認識というものをあまりに気にかけずに読んできたので、そのあたりに気を配って読むようにしたいと思いました。
    あと、後で振り返れるよう、付箋を挟みながら読み始めています。それを活かせるかどうかは、まだまだ工夫が必要そうです。

  • 文章量を定めて、文章を磨く メモの最後に触れた、文章の分量の件が、今回2冊を読んで一番強い印象を受けたトピックです。「倍書いて半分に削る」というのは、今後やってみようと思っています。