メディヘン5

時々書く読書感想blog

相田裕『GUNSLINGER GIRL』 けなげなハードボイルド

普段、この手のキャラクターのマンガは買わないのに、カバーに描かれた銃器の硬質さが気になって買ったもの。

Gunslinger girl 1
GUNSLINGER GIRL 1
posted with 簡単リンクくん at 2006. 7.27
相田 裕
メディアワークス (2002.11)
ISBN : 4840222371
価格 : ¥578
通常24時間以内に発送します。

■あらすじ

物語の舞台はイタリア、現代。「公益法人社会福祉公社」は、福祉事業を隠れ蓑にして先天的あるいは後天的に肉体に障害を負った少女たちを集め、サイボーグ化と洗脳により優秀な兵士として育成した。彼女たちは、絶対服従するよう条件付けられた教官兼指揮官の男たち(担当官)と「フラテッロ(兄妹)」と呼ばれるパートナーを組み、殺人機械として特務任務に身を投じる...

■感想

はっきり言って鬼畜かつ救いの無い設定の物語であり、また、非常に強い願望充足的な要素を持った物語でもある。どうも、この作品は、この両面をうまく組み合わせることにより、大変魅力的な物語となっているような気がする。
 
物語の主要なテーマの1つは、少女たちと担当官たちの人間関係だ。その関係は、兄と妹、父と娘、使用者と道具...といった異なる形で描かれているが、少女たちに、担当官の命令への絶対服従はもちろん、おのれを犠牲にしても担当官を守るという条件付けがなされている点は共通している。身を挺して男に尽くす可憐な少女、という存在は、いわゆる「メイドさん萌え?」というものにもつながるが、もちろん現実にはありえないある種の男の願望そのものだろう。だが、そこに、「条件付け(洗脳)」という仕掛けが導入され、不具者が健康になる(=幸せになる)ためのもの、という理由付けがなされることにより、物語としての説得力が生じるわけだ。この理由付けの大本の、そもそもなぜこうした存在が必要なのかという点について、イタリアという我々には事情がよくわからない舞台を設定することにより、うまく処理されている。

もちろん、ストーリーやキャラクターの魅力もあるだろう。
特に主役である少女たち。自由に動かせる体と自分の居場所を手に入れた喜びをさまざまな形で表現し、また、ある種不自然な担当官との関係に悩みながらも過酷な任務を遂行する姿は、まさに、けなげ。アニメ化されてしまうのも、よくわかる、というものだ。