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時々書く読書感想blog

佐藤賢一『英仏百年戦争』 それは百年戦争ではなかった

本書の著者、佐藤賢一氏は、『王妃の離婚』で直木賞を受賞するなど、西洋歴史小説を中心に活躍中の方。ところが。私は、本書を3/4くらい読むまで、この人と『墨攻』など中国歴史小説で有名な酒見賢一氏を混同して、同一人物だと思っていた。1)歴史小説を書く人、2)「賢一」という名前、3)「サ」で始まる名字、というあたりから間違えてきたみたいなんだけど、「西洋ものと中国ものを両方書けるなんて器用な人だよなぁ」などと、暢気に思っていたのでした。
 
この間も、OVA『Serial Experiment Lain』のテーマを歌ったイギリスのBOAというバンドと、J-POPのBoAを間違えてCD借りてきちゃうし。ぼけているのであった。

英仏百年戦争
英仏百年戦争
posted with 簡単リンクくん at 2006. 7.30
佐藤 賢一著
集英社 (2003.11)
ISBN : 408720216X
価格 : ?714
通常2-3日以内に発送します。

■内容

世界史とってなかったし(あるいは、とってたけど)、いきなり百年戦争と言われてもなぁ、という方。私もお仲間(後者です)なのでご安心を。
 
年号から入ると歴史がわからなくなるもとという説にしたがって、おおまかな流れだけ書くと、こういうことのようだ。時は中世の終わり。場所はフランス。イギリスがフランスに攻め込んで、最初からイギリスが勝って勝って勝ちまくる。特に、黒太子エドワードという人がむちゃくちゃ強い。ところが、終盤、フランスにスーパーヒロインのジャンヌ・ダルクが登場し、一発大逆転で最後はフランスの勝ち。破れたイギリスは敗戦責任などで揉めて薔薇戦争という内乱に突入。勝ったフランスは、王様の元に絶対王制を確立してハッピー・エンド。
 
こういう風に書くと、第三者からは、善い者=フランス、悪者=イギリスの勧善懲悪ものかい、という感じがする。が、本書の主題は、この戦争は、そもそも英仏間のものではなかったし、百年間の戦争でもなかったという、ある種のちゃぶ台返しを狙ったもの。

なぜそう言えるのかは、タネを明かしてもらえば、ある意味単純。この戦争が始まった当初(あるいは中盤くらいまで)は、1)イギリス王家はイングランドを領地として持つフランス人領主という種類の人々だった、2)英仏双方とも、イギリス(イングランド)、フランスという国家概念は存在していなかった、という。このことから、「百年戦争」というのは、イギリスからフランドル(ベルギーなど)、フランスにまたがる領域における、一種の領主間の紛争であるというのがその実態で、こうした紛争は、「百年戦争」が開始されたとされる1337年に先立つこと遥か以前、ノルマン人がイングランドを征服した12世紀から延々と繰り替えされて来たというのが、著者の見解。

■感想

だからどうだ、と言われても弱るのだが...そもそもなんで、突然この本を買ったのかも忘れてしまった。まあ、読みやすかったし、勉強になったから、よしとするか。
 
この佐藤賢一氏の小説には、アルビジョワ十字軍ものの『オクシタニア』というのもあるらしく、最近のカタルーニャ趣味からは、そちらの方が気にかかる。『ダルタニャンの生涯 史実の『三銃士』』といのも岩波新書にあるなぁ。これも、ちょっと気になる。