岩本隆雄『イーシャの舟』 2巻目も読まなければ・・・
『星虫』『鵺姫真話』から続く連作シリーズの3冊目。1作目しか読んでいないのに、平積みが眼に入ったせいで、なぜか買ってしまった。
■あらすじ
人類史上初の試作スペース・コロニー。その一角を占める空き地にひっそりと建つ掘っ立て小屋。空き地の存在を知るものは、誰しもが、そのいわれを知りたがった。しかし、コロニー建築の責任者は、「コロニー実用1号完成までは話せない。その時になれば、誰もが空き地の存在に納得するだろう」と語るばかり・・・という、魅力的なプロローグで始まる物語。
本編の出だしは、スペース・コロニーとはまったく無縁。
主人公・宮脇年輝は、不運に見込まれた貧乏青年。ある晩、天邪鬼伝説で知られる「入らずの山」に建設中の産廃処理場を通りかかった彼は、立ち往生した美女の頼みを聞き入れたことから、天邪鬼に取り付かれることとなる。年輝と天邪鬼との共同生活はいかに・・・というのが、本編の出だし。「入らずの山」からスペース・コロニーから、見事なストーリー展開で話が進みます。
■感想
『星虫』でもスペース・コロニー建設の話がチラリと触れられていたので、キャラクターの中に、ハハァ、この人はアレなんだな、と思い当たる人物が登場。こういった緩やかな作品間の連携は、直接話がつながる普通のシリーズものにはない、連作ものの楽しいところ。
もちろん、本作単独でも、十分楽しめる作品です。
主人公・年輝にせよ、天邪鬼にせよ、ある種、漫画的なキャラなのですが、脇役をうまく活かした描写から、思わず彼らの生活に引き込まれてしまいました。また、各キャラから地球自体まで、どうなることやら、とハラハラさせられるところもうまく盛り込まれいます。終盤、話が大きく膨らんで、どうなっちゃうのー、というあたりは、『星虫』と同様。でも、しっかり、期待通りのハッピーエンドに終わってめでたしめでたし。
ラストは予定調和的に、みんなハッピーというあたりは、少々物足りないかも。しかし、ジュブナイルとしては良い出来で、ソノラマ文庫は本来、こういう本を揃えたかったんじゃないか、と思えます。2作目も購入決定!
■関連リンク
- 『イーシャの舟』@RUNAWAY FELLOWS
ぶっちゃけこのお話は「ボーイ・ミーツ・ガール」の一言でまとめることができてしまいますですね(笑)。
まさに、その通り。そこがいい、というのも、おっしゃる通りですね。
- 岩本隆雄「イーシャの舟」@ホンの愉しみ
天邪鬼がとにかく、いじらしくかわいらしい。
私は、和美さんがいじらしくかわいらしかったです(笑)