メディヘン5

時々書く読書感想blog

シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』 スタージョンは凄かった

不思議のひと触れ
シオドア・スタージョン著 / 大森 望編
/ 大森 望訳 / 白石 朗訳
河出書房新社 (2003.12)
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■内容

一昔前には、SF入門書(SFって「入門」するものだったんだよなぁ)やオールタイム・ベストに必ずといっていいほど取り上げられる“名作SF”というものがあった。シオドア・スタージョンの『人間以上』もその一つだろう。本書はそのスタージョンの短編10編を集めた作品集である。収録作は、初訳のもの、短編集未収録のもの、収録短編集が絶版となったものから集められており、いづれも現在読むのが困難なものばかり。また、作品のジャンルについても、スタージョンの多芸さをカバーすべく選択に工夫が凝らされている。たとえば、表題作「不思議のひと触れ」」はロマティック・ファンタジー。デビュー作「高額保険」や「もうひとりのシーリア」はサスペンス調。初訳の「閉所愛好症」や「雷と薔薇」は、昔懐かしいSF短編の趣き。ユーモアについては「裏庭の神様」「タンディの物語」・・・・・・といった幅の広いセレクションになっている。

■感想

自分にとってスタージョンと言えば・・・・・・やはり、「SFの90%はクズである。しかし、世のあらゆるものの90%もまたクズである」というスタージョンの法則が思い浮かぶ。一方、スタージョンには難しい作品を書く「文学系」SF作家というイメージもあった。『人間以上』を読んだのが中1くらいで良く理解できなかったせいもあるし、学生時代に読んだサンリオSF収録作に今一ピンとこなかったせいもある。
 
しかし、この作品集を読んで印象が様変わり。スタージョンの名が有名なのは、法則のせいでもなんでもない。何より小説が上手いからなのだ、ということがわかった。各作品それぞれ、不思議なせつなさが感じられ、50年以上前に書かれた作品がほとんどにあるのに古さを感じさせないのであった。
 
収録先の中では、ロマンティックなファンタジーの表題作「不思議のひとふれ」、短編の紙数で絶対的孤独感を見事に表現した「孤独の円盤」がお気に入り。
 
この<奇想コレクション>、どの巻も「買ってよかったぁ」と思わされてばかりだが、『不思議のひと触れ』はその想いがひとしお。第4集『フェッセンデンの宇宙』も買うぞ! そして、もう一つのスタージョン作品集『海を失った男』も、もちろん!