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時々書く読書感想blog

大森望・豊崎由美『文学賞メッタ斬り!』

文学賞メッタ斬り!
大森 望著 / 豊崎 由美著
パルコ (2004.3)
通常24時間以内に発送します。

■内容

SF翻訳家・大森望氏とライター・豊崎由美氏(肩書きはカバー折り返しの著者紹介より)が、小説ジャンル全般に渡る各種文学賞の最新の授賞状況を巡り対談を繰り広げる。それだけだと、そもそもなんで単行本になるの?という感じだが、芥川賞直木賞からミステリー、SF関係の賞まで、拡散した小説ジャンル全体の状況を「文学賞」という切り口で切り取ったアイデアに価値がある。
 
全体が14の章(ROUND)からなる。おおむね以下のような、三部構成となっている。
導入部は、芥川賞をはじめ、いわゆる「文学」系の文学賞(ROUND1?4)。続いて、現在好調(なんですよね?)で
境界的な作品も多いミステリー関係(ROUND5?9)。終盤は、ファンタジー、SFに触れた後、名誉賞的な賞に言及し、ラストを地方文学賞に充て、「文学賞甲子園」でオチとなる(ROUND10?13)……はずが、出版時期が芥川賞直木賞発表直後となったということで、オーラスROUND EXは今年の両賞受賞作に関する電話対談で幕。

■感想

自分自身は、文学賞というとヒューゴー賞ネビュラ賞が最初に思い浮かぶ程度で、文学賞というものにはほとんど興味が無かった。文学賞に興味を持たなくなった原因には、昔、周りのSFファンの中の会話の中にあった「賞ものに傑作無し」という言葉のせいのような気がする。しかし、この本を読んでみたら、個々の作品はともかく少なくとも受賞する作家については注目すべきだ、ということがよくわかった。
 
また、タメになったのは「選評っておもしろいんだよ」と言う点。かならずしも名作家が高い選定眼を持つとは限らないと思うのだが、選者に有名作家を持ってこないとマズイだろうというのも理解できる。そうした状況の中で、選定を行う作家勢や、候補作を推す事務局サイド等の間ではいろいろやり取りがあるのだろう。そうしたややこしくも面白そうなあたりを窺えるのが選評ということにもなるらしい。これまで、出版状況というものを絡めて選評を読んだことはないのだが、そうした点も頭に入れて読んでみるとおもしろそうだ。
 
著者のお二人が直接関わったエピソードの中では、応募原稿がトンデモない代物だったという第6回ファンタジーノベル大賞受賞『鉄塔武蔵野線』(銀林みのる)の話がおもしろかった。あの作品の写真ってホントに著者が撮ったものか、ずっと謎だったんだけど、写真付きで応募されてきたものだったのね。


■関連リンク

『文学賞メッタ斬り!』公式サイト