メディヘン5

時々書く読書感想blog

小川洋子『博士の愛した数式』 数式と、もう一つ

博士の愛した数式
小川 洋子著
新潮社 (2003.8)
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■あらすじ

家政婦である<私>の新たな勤め先は、老数学者の独り暮らし。事故で80分しか記憶の持たない老数学者と<私>、その息子<ルート>の出会いと触れ合いを描く。

■感想

相方に本作を勧めて読んでもらったら、「男の人の好きそうな話」とのこと。そのこころは、「世の中、こんな“いい人”たちばかりじゃないよ」。ちなみに、相方は、三浦綾子村上春樹スティーブン・キングのファンです。まあ、私自身は、いい話だなぁ、と平和な気分になったので、いいのですが。
 
このお話、単にいい話に終わらないところは、一つには、もちろん数学が出てくるところ。女性作家が書く小説の小道具としては意表をつく数学が見事にストーリーに溶け込んでいるところは、あまりの自然さに逆に驚くぐらい。
  
もう一つ、三人を結ぶアイテムとして忘れてはならないのは、野球。最近の子供達を見ていると、サッカーの隆盛に比べ、なんとなく“懐かしさ”すら漂ってしまうのが、現在の野球の状況。その野球をうまく盛り込んでいるところで、自分自身の子供時代への郷愁も感じてしまうのが、本作の魅力の一つだと思う。というか、数式より野球についてのエピソードの方が印象に残ったんですよね、私の場合。