メディヘン5

時々書く読書感想blog

ジョージ・R・R・マーティン『タフの方舟(1) 禍つ星』

本屋で見てはいたものの、表紙のハヴィランド・タフ氏(この際、タフやんと呼ばせていただきたい。なんとなくですが)が嶋田久作+ハルコンネン男爵(映画版)みたいで不気味なため、ついつい買わずにいたもの。堺三保氏がblogにて最近痛快なSFをあんまり読んでないなあと思ってる人は全員「買い」だ!と書かれていたので、読んでみたら、確かにおもしろかった!

タフの方舟 1
ジョージ・R.R.マーティン著 / 酒井 昭伸訳
早川書房 (2005.4)
ISBN : 4150115117
価格 : ?882
通常24時間以内に発送します。

ジョージ・R・R・マーティンというと、堺さんが触れておられ自分でも紹介を書いてみた<ワイルド・カード>よりも短編「サンドキングス」の印象が圧倒的。「サンドキングス」については、溝口さん@書物の帝国の紹介等を見ていただきたいのですが、ようするに、結構おっかなかったホラーSF→自分的にはマーティン苦手という意識が出来ていたのでした。本書についても、かなり怖いもの見たさ的に読み始めたので予備知識ゼロ。連作短編集であることに気づいたのも、第1篇をしばらく読んで、「この厚さの長編でこの展開はちょっとヘン???」と思ってからという体たらく。その分楽しめたという気がするのでネタバレは避けるべきと思うのですが、内容に触れずに感想を書く自信が無いため、警告付きで書いてみることにしました。(ま、連作短編集であるということぐらいはいいでしょう)

■感想

ホラーSFだと思って読み始めたので、まずプロローグでビクビク。自動治療機械でこなせないほどの疫病が次々襲ってくる不幸な星。というと、体中にキノコが生えてきたり、内臓じゅうにキノコが生えてきたりというヤツか・・・・・・と、想像してしまってゾクゾクしたのでした。恐怖の疫病=「キノコが生えてくる」というあたりは、我ながら『マタンゴ』でビビッた頃から進歩がありませんが。

んで、第1編「禍つ星」に突入。帯に「宇宙一アコギな商人」などと書かれているタフやんであるが、逆にオバタリアンやDQNオヤジにいじめられる彼に同情。話が進んで、これはタフやんが方舟を手に入れる話だな、と気づいてしまえば、もう怖くない。しかし、<ハイペリオン>に出てきた「十字架生物で一杯の巨大洞窟」みたいな巨大戦艦内の生物培養槽群とか、凝りまくりの防衛用生物兵器とか、やっぱりマーティンって不気味。単分子繊維(?)で切り刻むなどというのは珍しくありませんが、スパッと行ってもどこか乾いた感じのニーブンあたりの描写とはエライ違い。そんな描写に思わずのめりこんで、どうせこれでオチがつくんだろうなぁと思っていた仕掛けのことをすっかり忘れてしまい、ラストは思わず手に汗握ってしまったのでした。

第2編「パンと魚」は、仕掛けよりもキャラ立ちか。『銀河乞食軍団』でも立派にやっていけそうな豪快姉御トリー・ミューンが子猫にはまっていくシーンが最高。そういえば、SFって、『夏への扉』以来(以来?)、犬より猫の方がいい役もらっているような気がしますが、どうでしょうか。

第3編「守護者」は海からの侵略ということで、ウィンダム『海竜めざめる』やらベンフォード『星々の海をこえて』を思い出す。長編だったら、これらに匹敵するような話だったろうに・・・・・・でも、このオチは古典的すぎるような。ハッピーエンドとは言え、これぢゃ“ノンマルト(→シナリオ)”じゃん!

第1編だけなら★×5ですが、第3編が今ひとつだったので★★★★。下巻に期待大!でも下巻の表紙はタフやんは勘弁。トリー・ミューン姉御あたりがいいと思うんスが……とか書いていたら、第2巻も発売なんですね。この表紙は姉御ということでいいんですよね?

タフの方舟 2
ジョージ・R.R.マーティン著 / 酒井 昭伸訳
早川書房 (2005.5)
通常2-3日以内に発送します。