メディヘン5

時々書く読書感想blog

ロバート・A・ハインライン『銀河市民』

1972年にハヤカワSF文庫で刊行された作品の新装版。

銀河市民
銀河市民
posted with 簡単リンクくん at 2006. 7.29
ロバート・A.ハインライン著 / 野田 昌宏訳
早川書房 (2005.5)
ISBN : 4150115176
価格 : ?903
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■あらすじ

産まれの定かでない少年ソービーは、銀河の片隅の惑星サーゴンの市場で奴隷として売りに出されていた。彼を落札したのは乞食のバスリム。乞食とは思えない教養と態度を示すバスリムから教育を受けたソービーは、銀河に旅立ち、宇宙商人や軍人としての生活を送る。そして、ついに自らの出自を知った彼は、人類発祥の地である地球へと向かうのだった……

■感想

まったくピュアな冒険成長物語で貴種流離譚。もちろん、主人公ソービーには魔法使いや長靴猫とかの頼りになる味方がいるわけではなく、武器になるのは己の既知と誠意だけ、という清々しさ。周囲の人々にも助けられ、清く正しく抜け目無く、American way of lifeな人として成長していきます。さらに、タイトルに『銀河市民』(原題:"Citizen of the Galaxy")とあるのは伊達ではなく、最後は、銀河にまたがる“市民”たるものが持つべき気概、というところまで話が行ってしまうあたりスケールがでかい。

どうにも大人向けとしてはどうよ、という感じですが、やはり原書は完全にジュブナイルとして発表されたものとのこと。解説者の三村美衣氏も“最初に読んだのは小学校5年生”とか書いているし、いい歳した人間が読むのはちと恥ずかしいかも。

まあ、スペオペってのは元からそういうもんだと割り切ってしまえば、ストーリーテリングは一級品のハインライン作品、結末まで一気に楽しめます。ハインライン流のシンプルな人生感も、ややこしい日々の暮らしの中の清涼剤としていいかも。