田中哲弥『やみなべの陰謀』
そういえば『蹴りたい田中』って買い損ねたなぁ、タイトルだけで笑えたのに。今回は無くならないうちに買っておこう、などと本書『やみなべの陰謀』を購入したのでした。
帯に、
田中哲弥がもう少し勤勉なら、
日本SFの歴史は変わっていたかもしれない。 大森望
などとあるのを見て、でも、『銀河帝国の弘法も筆の誤り』なんてのもあったじゃない、なんかオーバーだな、などと思いながら。
そう、私は、田中哲弥氏(→Wikipedia)と田中啓文氏(→Wikipedia)を完全に一緒くたにしてしていたのです。なんと、この感想を書きはじめるまで、前記三冊は同じ田中氏が書いているのだと思い込んでいたバカ……_| ̄|○
■感想
最近、文庫本を読む時に、裏表紙などに書かれたあらすじも解説も読まずにいきなり読み出すことがほとんど。この『やみなべの陰謀』も、そのパターンでズンズン読み進んだところ、収録5作中の4作目まで読んだところで、頭を抱えてしまった。
各作品からキーワードを一つずつ取り出すと、
千両箱
↓
一目惚れ
↓
秘剣
↓
お笑い
という感じで、短編連作だということはわかるのだけど、四編が連作として頭の中でつながらない。これは、ひょっとして“不条理”つながりということかい、などと最後の一編を読み進んだのだが、なんと最後に、
↓
じいさん
となって、一気に全ての話が時間SFとしてつながってしまった。このつながり感の爽快なこと、あっけにとられたというか、まさにセンス・オブ・ワンダーというか。まあ、田中氏二人の区別もついていなかったオッチョコチョイの感想ですけど……
前世紀からの田中哲弥評の集大成(らしい)大森望氏の解説も、とても素面で書かれたとは思えない力の入りようで秀逸。
とりあえず、<大久保町>三部作を発見したら即買いだ、と言うことはよくわかりました。
■関連リンク
- e-novels田中哲弥特集(e-novels内)
「田中哲弥・全作品紹介」(大森望)、我孫子武丸・飯野文彦・小林泰三・田中啓文・冬樹蛉・牧野修各氏による「寄せ書き」、「田中哲弥先生のやみなべ人生相談」。
- Tetsuya Tanaka's page:著者HP。