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時々書く読書感想blog

ハーヴェイ・ジェイコブズ他『グラックの卵』浅倉久志編訳

積読積滞本の1冊。

グラックの卵 (未来の文学)

グラックの卵 (未来の文学)

浅倉久志選による<ユーモアSF>傑作集ということで、片意地張ったところのない大人のアンソロジーだなぁという読後感。このアンソロジーでの“SFの S”は、サイエンスやらスペキュレイティブというより、ソフィスティケイテッドのSだ、というところ。その分、これはスゴイ!、と興奮させられるところがなかったのも事実。

収録作9作のうち、特に楽しめたのは次の4作かな。

  • 巻頭収録、ネルスン・ボンド「見よ、かの巨鳥を」
    • 収録作中、一番の大じかけ。というか、大抵のSF作品と比べても相当な大じかけの部類でしょう。なんせ巨鳥と言ってもサイズが違う。こういうホラ話系が好み。
  • ジョン・スラデック「マスタースンと社員たち」
    • 主人公ヘンリーが事務社員として入社したマスタースン社での日々。正直、どういう話なのかとらえどころが無いのだけど、社長と社員たちのまったくナンセンスな行動を追っていくだけで、時が経つのを忘れてしまう。
  • ジョン・ノヴォトニィ「バーボン湖」
    • タイトルのまんま、バーボンで満たされた湖の話で、このシンプルさから、あちこちのblogで本書の感想を見て一番記憶に残っていた。酒飲みに悪人無し!酒飲み万歳!二日酔いには迎え酒!というストーリー。景気が良くて結構、結構。
  • 表題作にして巻末収録、ハーヴェイ・ジェイコブズ「グラックの卵」
    • 謎の鳥グラックの卵を巡る、愛と友情のドタバタ劇。卵を受け取る→暖める→孵す、という当然の三段構成だが、それぞれのパートの登場人物が印象的。ニヤっとさせられる下ネタが良い味付け。

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