メディヘン5

時々書く読書感想blog

アメコミSFと言えば <ワイルド・カード>シリーズ

<ワイルド・カード>シリーズ
大いなる序章 上・下 Wild Cards
宇宙生命体襲来 上・下 Aces High
審判の日 上・下 Joker's Wild

編:ジョージ R.R. マーティン
翻訳:黒丸尚

出版:創元SF文庫/東京創元社
発行年月:1992/1993/1994

■あらすじ

このシリーズは、アメリカン・コミックのTRPGで盛り上がったアメリカのSF作家たちが始めたものだそうで、共通の設定を元に複数の作家が連作する形式をとっています。その共通設定は下記の通りで、関連する年表等も用意された、歴史改変物となっています(SFのサブ・ジャンルで言えば)。

「1946年、異星人のもたらした"ワイルド・カード・ウィルス"爆弾が、マンハッタン島上空で炸裂。ウィルスに感染したものの90%は死亡、生存者の90%も"ジョーカー"と呼ばれる異形の存在に変容。残ったわずかの人々のみが、超能力を身につけ"エース"と呼ばれることとなる」

この"エース"たちが、アメコミのヒーローに相当する役回りとなり、"ジョーカー"や一般人の悪役、ひいては宇宙生命体を相手に大立ち回りを演ずる、というのが<ワイルド・カード>シリーズです。残念ながら日本では、3巻目で刊行が停まってしまいましたが、米国では昨年16巻目が刊行された人気シリーズになっているようです。

■感想

このシリーズ、まず書いている人たちの顔ぶれがすごい。G.R.R. マーティンをはじめ、ロジャー・ゼラズニイエドワード・ブライアント、ルイス・シャイナーといった、どちらかというと文学指向の強い人たちが、ヲタク趣味を全開。この濃い人たちが、「人物像も設定もリアルじゃない」といったアメコミ批判であるとか、そうした批判にも関わりがある本家アメコミのダーク・ヒーロー路線なども十分意識した上で、戦後米国史の歴史改変という大仕掛けに挑んでおり、結構、読み応えがあります。

うーん。書いているうちに、また読みたくなってきてしまった。しかし、続刊が出てほしいような、既刊全6冊を読み直すのもしんどいような複雑な気分。