ダン・シモンズ『夜更けのエントロピー』
“なんでもありSF”<ハイペリオン>四部作で度肝を抜いてくれたダン・シモンズ。彼の作品集ということ、それに、例によってタイトルを気に入って購入。
夜更けのエントロピー
posted with 簡単リンクくん at 2006. 7.26
■あらすじ
本書は、ダン・シモンズの1982年のデビュー作から、95年の作品まで7編を集めた日本オリジナル編集の短編集(大部分は再録作品)。分野としては、SFという感じではなく、どちらかというとホラーというところか。ダーク・ファンタジーという言い方が合うのかもしれない。
■感想
収録作7編のうち、デビュー作の「黄泉の川が逆流する」を含む4編は、不死の存在を素材にしている。いずれも、一筋縄ではいかない作品揃い。特に、「最後のクラス写真」はブラック・ユーモア風かと思いきや、ラストに至って大いに泣かせていただきました。
残り3編のうちの「ケリー・ダールを探して」は、元教師の主人公が世界から世界へと移りながら昔の教え子を捜すというもの。SFマガジンに掲載されただけのある最もSF色の強い作品で、ホラーっぽいものがちょっと不得意な自分には、一番楽しめた。表題作の「夜更けのエントロピー」も残りの作品の一つ。特に何事も無くストーリーが進むのだが、巧みに挟み込まれた挿話が漠然とした不安を煽り、大きな効果を生む。娘を持つお父さんにおすすめの一作。
訳者後書きによると、表題作の初出時のタイトルは「真夜中のエントロピー・ベッド」だったそうだが、「夜更けのエントロピー」の方が断然、魅力的だと思う。
■関連リンク
悪漢と密偵 by 鉄家
『夜更けのエントロピー』レビューを中心としたシモンズ論。