メディヘン5

時々書く読書感想blog

神林長平『親切がいっぱい』

夏頃に買って、積読状態で放っておいたもの。
外人部隊の女』が重かったので、軽いSFが読みたくなり、出張の際に持っていって一気に読んでしまった。

親切がいっぱい
神林 長平著
早川書房 (2003.8)
ISBN : 4150307334
価格 : ?630
通常2-3日以内に発送します。

■あらすじ

この本、初出は1990年とのこと。この年は、他に『帝王の殻』『完璧な涙』『我 語りて世界あり』が出ております。

神林長平・著作リスト

この頃の作品でも、以前・以後の作品でも、神林長平の小説に共通するのは、舞台となる世界のルール。いや、ルールというより「律」と言った方がいいのかもしれない。この世には「因果律」=原因があって結果がある、といったルールがありますが、この世界の有様を律する基本的なルールに独特なアイデアを盛り込むのが、神林ワールドの特徴だと思います。

本作品の世界を律するのは、「全ての職業(泥棒やヤ○ザも含め)を政府による免許制とする」という法律。主人公の良子は、まだ免許の対象となっていない「ボランティア斡旋業」の社員。彼女が暮らす古アパートが、地上げによる立ち退きを迫られることになり、それを阻止するべく住民たちが立ち上がる・・・というのが基本的なストーリー。これに突然、空から降ってきた宇宙人が絡みます。しかし、特に大立ち回りやドタバタになるわけでもなく、たんたんと話が進むのが、この作品の特徴。

■感想

思い返しても、なんとも起伏の無いストーリーなんですが、退屈という印象をうけずにスルスル読んで、こちらも平穏な気分になって終わってしまう、という変わった作品です。ほのぼの、というのともちょっと違う。登場人物の造形が上手、というか、独特の雰囲気があって、うまくのせられてしまう感じなのかもしれません。

このとぼけた感覚は、気分がトゲトゲの時にいいかも。