メディヘン5

時々書く読書感想blog

フリッツ・ライバー『妻という名の魔女たち』

本作品、昔、サンリオSF文庫というヤツで出ていたのだけれど、買い逃して絶版になってしまい、残念に思っていたもの。今回、創元推理文庫から再刊されて良かった良かった。しかし、昔は360円だったのに、今回の版は760円(!)。文庫本も高くなったもんだ。

妻という名の魔女たち
フリッツ・ライバー著 / 大滝 啓裕訳
東京創元社 (2003.11)
ISBN : 448862507X
価格 : ¥798
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■あらすじ

本作品は、フリッツ・ライバーという大ベテランのデビュー作。最初のバージョンは1943年に出版されたというもので、物語の背景はちょっと古めかしい。

ストーリーの舞台は、アメリカの架空の地方都市。
主人公のノーマンは、その町にある、こじんまりとした大学に籍を置く文化人類学専攻の俊英。進歩的かつ合理的な発想が売りのノーマンは、保守的な同僚達とぶつかりつつも、妻のタンジィの内助の功もあって、社会学科主任教授のイスを狙う地位を得ている。

ある日、ふと妻タンジィの持ち物を調べたノーマンは、魔術道具がたっぷりしまい込まれているのを発見。妻が「迷信」にとらわれているのが許せない彼は、タンジィに全ての道具を捨てさせる。ところが、彼が最後のお守りを焼いた次の瞬間より、これまで順風満帆だった彼の生活に逆風が吹き始める。そして、ついには、愛する妻タンジィまでが行方不明に。ノーマンは、謎の敵に勝ち、妻と自分の生活を取り戻せるか?、というお話。

■感想

男性は合理的で、女性は迷信深い、という常識(?)を読者が持っていることが前提になったストーリーなので、今の感覚からすると、ちょっと違和感がある。大学の教員がみな男性という点についても、日本では今でも通じるかもしれないが、アメリカの現状にはそぐわないだろう。しかし、大学の教員夫人という取り澄ましたイメージの女性達が、実は、夫を守って戦う魔女ばかりだった、というユーモラスな感覚は違和感なく楽しめた。

ライバーの作品は、他に『バケツ一杯の空気 A Pale of Air』というのを持っているが、こちらにせよ『妻という名の魔女たち』にせよ、邦題が工夫されていて魅力的。タイトルだけで持っていたくなる1冊なのだった。