大森望・豊崎由美『文学賞メッタ斬り!リターンズ』
楽しませてもらった『文学賞メッタ斬り!』の続巻が出るということで、当然購入。
■内容
前作『文学賞メッタ斬り!』は、分野毎に主要文学賞を網羅するという難行偉業にチャレンジしていたこともあって、本文357pで14ラウンド(章)構成という、ちょっと忙しい作りになっていた。今回の『緑メッタ』は、同程度の厚みで以下の5ラウンド構成。1ラウンド1ラウンドが重厚になった印象。
ROUND1:島田雅彦・大森望・豊崎由美による公開トークショー
ROUND2:名物「主要文学賞の選評、選考委員」レビュー対談
ROUND3:30歳以下の有望新人作家紹介対談
ROUND4:島田・大森・豊崎による“Z文学書選考会実況中継”と芥川賞・直木賞選考結果へのコメント対談
ROUND5:「W杯方式」による第1回文学賞メッタ斬り!大賞選考結果発表
付録「文学賞の値打ち(文学賞受賞作品一言レビュー集)」も'04年〜'06年の3年分をカバーと言う大増量で健在。
■感想
どれもおもしろかったけど、知らなかった作品・作家を教えられたという意味では、ROUND3と付録が役に立った。
ROUND5の『メッタ斬り!大賞』は、W杯方式という仕掛けはおもしろいと思ったのだけれども、読んだ自分がW杯関係の知識がまったくなかったので、イマイチ、ニュアンスが掴めなかった。この賞の趣旨の純文学からエンタメまで「小説」で括って平場で比較するというのは大変おもしろい、というか、本来そうじゃなきゃヘンだと思うので、ぜひ「第2回」以降も実現していただきたいところだけど……
また、この『リターンズ』では、言及されている作家・作品について索引が追加されている。この索引が、作家・作品の言及箇所全て(例えば「宮本輝(テルちゃん)だったら23箇所とか)を引けるようになっているという優れもので実用性、大幅アップ。編集の方は大変だったんだろうと思いますが。
文学賞選考についての野次馬的興味も満たされるし、おもしろそうな本が見つかる実用性もあるし、お買い得感高し。
いずれにせよ、純文学やら文藝というものに馴染みのない自分にとっては、その種の読み物のおもしろさを伝えてくれるという点で貴重な本だというのは前作と変わらず。こういう本は、もっといろいろな切り口でいろいろな人が書いてくれるとおもしろいと思うのだが、やはり作るのが難し種類の本なのでしょうか。
■関連リンク
- 大森望×豊崎由美 2人あわせて約2,000冊!『そんなに読んで、どうするの?』
トヨサキ社長の書評集の出版記念イベントでのトーク・ショーの再録だが、やっぱりおもしろい。