メディヘン5

時々書く読書感想blog

古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』

文学賞メッタ斬り!>シリーズのどれかに書かれたいた評を読んで、おもしろそうだと購入。とは言え、二年越しの積読本にしてしまい、ようやく読了。

ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか?

期待に違わずおもしろかった。未読の『アラビアの夜の種族』をあわてて購入、こちらも楽しみ。

太平洋戦争中、日米攻防からキスカ島に取り残された4頭の軍用犬の血の系譜を描く物語を縦糸、ソ連邦崩壊後のロシアに現れた謎のテロリストとある日本人少女の関わりを描く物語を横糸として、両者が微妙に交錯する。

この縦糸・横糸とも刺激的なのだが、特に縦糸である<犬の視点から見た現代史>が素晴らしい。何せ、人間の1/6〜1/7の寿命である犬の世代交代を人間に置き換えれば、戦後50年も300〜350年分。人間が1世代も変わらない時間が、一帝国の興亡にも匹敵するスケールで迫ってくるわけだ。こういう視点で振り返られると、さすがにスゴいもんだな戦後史。

主語や自制の扱い、リズムが独特の文体に違和感を感じたと言う評も見たが、まったく気にならず。というか、犬族視点ということを強調するのに、極めて効果的と思ったが……

関連リンク

タイトルになっている犬族の星「ベルカ」についての情報を収集したリンク集が素晴らしい。

bk1)(本ブログ・書評、レビュー