メディヘン5

時々書く読書感想blog

感想:ジミー・ソニ, ロブ・グッドマン『クロード・シャノン 情報時代を発明した男』

情報について学ぶと教科書の一番最初に出てくるシャノン。そのシャノンの伝記が出たというので読んでみた。デジタルとビットの概念を見出したシャノンは、コンピューターとインターネットの歴史の最重要人物だろう。そのシャノンの伝記というものが2017年に刊行された本書以外見当たらないのが不思議だったが、読んでみてなんとなく納得した。ようするに、学問的業績以外はこれといって逸話が無い人物なわけだ。

結構な趣味人だし世の中が持つ天才のイメージを体現したようなところもあったようだが「ほどほど」な程度。人当たりも良かったようで同時代の天才たちとのやり取りも如才なくこなしたという話しかない。そのせいで、せっかく機会があったチューリングとの接触についても特段の逸話が無いのが特に残念。それぞれ英米両国の暗号解析の重要人物ということで具体的な話ができなかったようだが、この二人が自由に交流できていれば、人工知能の歴史にどれだけ影響があったことだろうか。

シャノン自身についてより驚いたのが、シャノンを見出してMITに招いたのがヴァネヴァー・ブッシュだったということ。「メメックス」の構想でハイパーテキストのアイデアを生み出したという人物だが、実際は第二次大戦期のアメリカの科学行政を仕切っていたというのが重要な人のわけで、どれだけの目配りをしていた人なのか、ブッシュの伝記の方が読みたくなった。