メディヘン5

時々書く読書感想blog

冲方丁『ばいばい、アース』


2007年の9月〜11月に1巻から3巻まで月一で出た後、最終4巻が止まっていた『ばいばい、アース』。じりじりしていたら、2月にようやく4巻が出ましたね。あとがきか解説に間が開いた事情が出ているかと思ったけど、何もなかった。


ばいばい、アース 1 理由の少女 (角川文庫 う 20-1)ばいばい、アース 2 懐疑者と鍵 (角川文庫 (う20-2))ばいばい、アースIII  爪先立ちて望みしは (角川文庫)ばいばい、アース〈4〉今ここに在る者 (角川文庫)


舞台は、空に聖星<アース>が浮かび、動物の特徴を持つさまざまな種族が闊歩する世界。ヒロインは、若き剣楽士、ラブラック・ベル。ただ一人、なんの種族的特徴も持たない彼女は、出自を求めて旅に出ようとする。しかし、そのためには、都市<パーク>の王の試練を果たし、旅への鍵を得なければならない。都市に赴いた彼女は、そこで正義<トップドッグ>と悪<アンダードッグ>の闘争に参加することになる。

……というような、ルビ付きオリジナル用語がちりばめられた絢爛豪華な国産ヒロイック・ファンタジーの超大作であります。


あ〜、長かった。というのが、正直なところ。ルビ付きオリジナル用語の頻出は気にならない、というか結構好きな方なので問題無し。しかしなんせ、ヒロイン・ベルのコミュニケーションの基本が剣をふるうこと、とあって、いけどもいけども撃剣(物語では剣楽と言います)の嵐。まあ、それぞれのシーンはむちゃくちゃカッコいいうえ、異様に迫力があって楽しかったんだけど・・・・・・『マルドゥック・スクランブル』は、カジノのシーンが入っていてホントよかった。あの作品も銃撃戦ばかりでは、食傷気味になっていただろう。

マルドゥック・スクランブル』と言えば、この『ばいばい、アース』を読んで、あの<マルドゥック市>の物語の続きが出るのか、またまた気になってしまった。だって、<理由の少女>ベルと、「なぜ自分が」ということにこだわるルーン・バロットが重なるし、<唸る剣>ルンディング+<導き手>ガイダンスがウフコックという感じだし。だとすると、ベルが旅を目指すように、バロットもマルドゥック市を出て行くことになるか気になってしかたがない。まあ、気長に待つしかないわけですが。

それはそれとして、冲方丁という人の作品、著者自身の書き終わったときのテンションがそのまま作品のラストの雰囲気に出ているんだろうなぁ。『ばいばい、アース』や『マルドゥック・スクランブル』のラストは、書き終わったぞぉ、という肩の荷を下ろした感がよく出ていて、読んでるこちらもホッとできる。センセ、お疲れ様でした、という感じ。『マルドゥック・ヴェロシティ』はテンション上がりっぱなしのラストで、こちらも力が入ったまま。やっぱり、あの続きが気になるなぁ。