メディヘン5

時々書く読書感想blog

ウィリアム・ギブスン 『パターン・レコグニション』

ギブスンはお気に入り作家の1人なので、迷わずbk1で購入・・・・・・でも、しばらく積読にしてしまった。


■あらすじ

舞台は現代の欧州。特殊な才能で広告業界フリーランサーとして生きるヒロイン・ケイス(!)は、Webで発見される謎のビデオ・クリップ・シリーズ「フッテージ」に取り付かれたマニアでもあった。クライアントである広告業界の雄・ビゲンドの依頼を受けたケイスは、「フッテージ」作者探索の旅を始める・・・・・・

■感想

ギブスンがSFを離れて書いた初の現代小説、ということで、ちょっと構えて読み始めたのだが・・・・・・時代と世界のパターンを読み取る才能、「聖杯」たるフッテージ、不気味な黒幕、巻き込まれ型の主人公って、まんま今までのギブスンと同じじゃない! ゴミのおじさんまで出てくるし・・・・・現代小説と言っても、現代のロンドンやモスクワなんて、馴染みの無さじゃSFの舞台と同じ。ギブスンのSFが好きな人になら安心して進められる一冊。
 
訳者あとがきによると、本作を書くにあたってギブスンは、舞台を現代に置き換えることのほか、視点をヒロインへ固定し、ストーリーの省略を行わないことを心がけたという。そのせいもあってか、かなり読みやすくなっているように思えた。過去の作品と比較すると、一番印象が近かったのはデビュー作『ニューロマンサー』(主人公の名前も同じだし)。
 
違和感があったとすれば、本書の“現代小説化”に重要な影響を与えたという「9.11」か。この事件については、どうしてもアメリカ人の受け止め方がよくわからない。この事件に関する言及部分については、今ひとつピンとこなかった。単なるお涙頂戴エピソードみたいな気がしちゃうんだよね。

本書の読後、懐かしくなって、電脳空間三部作+廃墟空間三部作の計6冊、一気に読み直してしまった。やっぱりギブスンは好きなんだなぁ。「廃墟空間三部作」という呼称は、"つながる読書空間"へのキーワード投稿から。