SFマガジン編集部編『SFが読みたい! 2010年版』
今年の『SFが読みたい!』は、なかなか読み応えがあって、得した気分。
SFが読みたい!〈2010年度版〉発表!ベストSF2009 国内篇・海外篇
- 作者: SFマガジン編集部
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/02
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 88回
- この商品を含むブログ (30件) を見る
ベストSF2009。
昨年は、あんまりSF関係を読んでいなかったとは言え、海外SFベスト10のうち2冊しか読んでいないというのは、イヤハヤ南友。まあ、国内海外合わせてベスト10作品の5冊が積読状態となっているので、今後の読書が楽しみではある。
しかし、1位の『ペルディード・ストリート・ステーション』は完全ノーチェックで存在自体気づいていなかったというのは大ショック。プラチナ・ファンタジイかぁ。海外SF3位はマーティン『洋梨形の男』。マーティンは、大昔SFMで読んだ「サンドキングス」の恐ろしさにビビッて以来、苦手としてきたんだけど、レビューを読むとスルーするのはもったいなさすぎる模様。
今号の『SFが読みたい!』の特別企画は、ゼロ年代SF総括。ゼロ年代SFベスト30とそのブックガイドを核として、鏡明・大森望・佐々木敦の「ゼロ年代SF総括座談会」が花を添える。1990年代の悲惨な冬の時代を越えた後の現在の活況を反映するにように、なんだかずいぶん余裕綽々な雰囲気の鼎談だなぁ、と。そうそう、対談の中で、大森望氏が、「小松左京御大が『虐殺器官』に小松左京賞を授賞しなかった理由」を推測している。ここの部分は、気になる人には貴重なコメントかも。
そのゼロ年代SFベスト30。海外はこんなもんかとと思ったけど、国内SFについては違和感が。『あなたのための物語』27位、『サマー/タイム/トラベラー』28位というのは順位が低すぎるのではないかい。また、ライトノベルの扱いについても疑問が。そんなに読んでいるわけではないけど、たとえば上遠野浩平『ぼくらは虚空に夜を視る』(2000)とか秋山瑞人『猫の地球儀』(2000)とか、今までの日本SFには無いおもしろさがあってビックリした記憶があるので、ベスト30にも入らないというのはなんとなく不満。他にもあるんだろうと思うんだけど『イリヤの空、UFOの夏』が代表で入賞、という感じなんですかね。
さて、2009年国内SF1位の『ハーモニー』の代わりに掲載されている早川書房・塩澤氏の伊藤計劃追悼エッセイ。伊藤氏追悼にとどまらず、いわゆるゼロ年代SF隆盛の仕掛け人の視点からのゼロ年代総括になっていて特別企画を補完する内容になっている。このSFの活況と伊藤計劃追悼が重なり合って微妙な陰影を感じさせる状況が、小説ではない現実そのものの複雑なところだなぁ、などとも思ったり。
最後は、「このSFを読んでほしい! SF出版各社2010年の刊行予定」。実は、これを読むために『SFが読みたい!』を買っているのです。今年の個人的な期待作は以下のとおり。
- 早川書房
- 角川春樹事務所
- 河出書房新社
- 『NOVA2』は夏、『NOVA3』は年末。
- マイクル・コーニイの<ハローサマー グッドバイ続編>も今年は出ると。
- 奇想コレクションのテリー・ビッスン第2弾は絶対買い。
- アヴラム・デイヴィッドスンの長編『エステル・ハージイ博士の事件簿』も気になる。
- 国書刊行会
- 出版芸術社
- 東京創元社
今年は、「マイベスト」系やブックガイド系のページもじっくり読んで、見逃していた注目作をbk1の「後で買う」リストに足していったら、30冊もウェイティングリストが育ってしまった。まだ出てない注目作もたくさんあるのに、どうすんだ>自分。