メディヘン5

時々書く読書感想blog

クリストファー・プリースト『限りなき夏』

6月に読んだんですが、すっかり感想を書くのが遅くなってしまった。

限りなき夏 (未来の文学)

限りなき夏 (未来の文学)

濃かったです。

期待が大きかったせいか、読み終わった直後は「こんなもんか……」という印象。ところが、数日経って各作品のことを思い返していたら、ジワジワとキました。その“キかた”を例えてみると、蒸溜酒の強いのを飲んで、はじめはフンフンなどと思っていると、後からグッと酔いがまわってくる感じ。

収録された8作品のうち、前半の4作品は、比較的オーソドックスなSF系。後半が<夢幻諸島>シリーズに属する4作品。後に進むほど、眩惑感が強くなり、ヘタに頭で読むより感ずるところを楽しんだ方がお得という感じ。特に、最後の「火葬」「奇跡の石塚」「ディスチャージ」の3編までくると、自分の生身の生理的なところに影響を受けるような感覚がありました。

収録作の中で一番気に入ったのは「ディスチャージ」。まあ、気に入ったというか、どうも書いてあることの一部しか味わえていない気がして、もう一度じっくり味わいたいと言うのが本当か。一方、「火葬」「奇跡の石塚」は生理的に受付けないというか、ひどく不気味なところがあって、今、本を手にとっても読み返す気が起きない……それだけ、強い印象を受けたということなんですが。

それにしても本書の収録先を読む限り、どうもこの作家の作品は長いほどおもしろい、というか読み応え・満足感が高いという印象。評判の高い長編『双生児』を積読してあるもんで、これから読むのがますます楽しみになったのでした。

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