メディヘン5

時々書く読書感想blog

日本SF

感想:新城カズマ『月を買った御婦人』伴名練編

ラノベ作家として知られる新城カズマ氏のSF系短編10編を集めた作品集。「日本SFの臨界点」というアンソロジーテーマに、ハヤカワ文庫JAなのに真っ赤な背表紙と気合い入りまくり。『サマー/タイム/トラベラー』から読み始めたニワカなので、編者・伴名練によ…

感想:高山羽根子『暗闇にレンズ』

「暗闇にレンズ」が浮かんで見つめているというイメージが不穏。一人称の女子高生パートのSideAと明治時代から始まる母娘たちの映像に関わる人生を追うSideB、いずれもレンズという「眼」を意識するとやはり不穏さが募って展開にハラハラさせられる。さらに…

日本SF作家クラブ編『日本SF短編50 I』 感想

これは買わねば、と思っていたアンソロジー。 近所の本屋にちょうど配本されたところをゲット。 日本SF短篇50 I (日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー)作者: 光瀬龍,豊田有恒,石原藤夫,石川喬司,星新一,福島正実,野田昌宏,荒巻義雄,半村良,筒井康隆,…

藤井太洋『Gene Mapper』 これが出たから今年が電子書籍元年

この『Gene Mapper』が出たから今年が日本の電子書籍元年と言えるのだ、というのは書きすぎ? Gene Mapper -core- (ジーン・マッパー コア)作者: Taiyo Fujii出版社/メーカー: Taiyo Lab発売日: 2012/07/12メディア: Kindle版購入: 7人 クリック: 58回この商…

長谷敏司『BEATLESS』 ラノベの王道と思ったらSFの王道だった

いやー、読み始めの印象と違って、ゴツい話だった。 頭に残ったキーワードは、アナログハック、自動化、フレーム問題、道具、といったところかな。BEATLESS作者: 長谷敏司出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/10/11メディア:…

伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』 謎が残るのは私だけ?

屍者の帝国作者: 伊藤計劃,円城塔出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2012/08/24メディア: 単行本購入: 43人 クリック: 1,717回この商品を含むブログ (191件) を見るエピローグまで読み終わっての感想は、やはりこれは「伊藤計劃のことを忘れないために」…

SFマガジン編集部編『SFが読みたい! 2010年版』

今年の『SFが読みたい!』は、なかなか読み応えがあって、得した気分。SFが読みたい!〈2010年度版〉発表!ベストSF2009 国内篇・海外篇作者: SFマガジン編集部出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2010/02メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 88回この商品を含…

大森望責任編集『NOVA 1』 勝手に集計・収録作言及度数ベスト5

昨年末の大収穫、日本SF久々のオリジナル・アンソロジー『NOVA 1』。久々とか書いたけど、自分自身じゃ日本SFの書き下ろし/オリジナル・アンソロジーなんて読んだおぼえがない*1。これは読まずばなるまい、というところですよね。NOVA 1---書き下ろし日本SF…

冲方丁『テスタメントシュピーゲル1』

blog再開、と思ったものの、結局記事が増えないまま月末。 まぁ、本自体、あんまり読んでないわけだけど。あんまり本を読んでいないというのには、なんだかヘロヘロに忙しいといった理由があるのだけれど、「他にやることはあれこれあれど、この本だけは読ま…

笹本祐一『ミニスカ宇宙海賊3 コスプレ見習海賊』

復活後、最初の感想がこれかい!という気分にさせられる相変わらずなタイトル。 でも、この記事で再び中断にするわけにはイカン、と思わせられていいかも。ミニスカ宇宙海賊3 コスプレ見習海賊 (朝日ノベルズ)作者: 笹本祐一,松本規之出版社/メーカー: 朝日…

SFマガジン編集部編『SFが読みたい! 2009年版』

SFが読みたい! 2009年版―発表!ベストSF2008国内篇・海外篇 (2009)作者: SFマガジン編集部出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009/02/11メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 19回この商品を含むブログ (45件) を見る今年はベストSF上位10作品のうち、国内4作…

大森望&日下三蔵 (編)『虚構機関―年刊日本SF傑作選』 勝手に集計・収録作ベスト5

虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)作者: 田中哲弥,大森望,日下三蔵出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2008/12メディア: 文庫購入: 13人 クリック: 190回この商品を含むブログ (102件) を見るこういう短編集が出版されるとは思わなかっただけに、まず…

笹本祐一『ミニスカ宇宙海賊』 タイトルに騙されたら損

ミニスカ宇宙海賊1 (朝日ノベルズ)作者: 笹本祐一,松本規之出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2008/10/21メディア: 新書購入: 10人 クリック: 422回この商品を含むブログ (91件) を見るどうにもベタベタなタイトル&表紙なもんでスルーしかけたのだけど、…

ショート・ショート2編

ネットで見つけたもの。 あたしスポック - World Wide Walker 「論理的にかんがえて」で吹き出した。こういうの読むとスタトレ見たくなっちゃっうなぁ。元ネタの方は全部読む気力がわかないんだけど、現代語訳を読むとフツーにいい話。 ふと思いついた妄想 …

古川日出男『アラビアの夜の種族』

いや、これはまた凄い。なんの準備も無く、いきなりオールタイム・ベスト級にぶちあたってしまった。って、いまさらだけど。なんで、こんな本を今まで読んでなかったんだろう>自分。ああ、もったいない。日本SF大賞受賞作、というのは、これまであまり意…

機本伸司『僕たちの終末』

僕たちの終末 (ハルキ文庫)作者: 機本伸司出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 2008/05/15メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 52回この商品を含むブログ (47件) を見る僕たちの終末作者: 機本伸司出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 2005/05メディ…

桜坂洋『All You Need Is Kill』

桜坂洋という人、2,3年前に読んだ『スラムオンライン』(→感想)を気に入って、他の作品も読みたいもんだと思っていたのだけど、売れ筋らしい<よくわかる現代魔法>シリーズはちょっと表紙が……ということで機会がなかった。そうこうするうち、『SFが読みた…

小林泰三『天体の回転について』

小林泰三という人はホラー&スプラッタの人だと思って敬遠してきたのだけれども、『海を見る人』を読んで、その抒情ハードSFというような雰囲気に感激。以後、自分的には、「注意して読むべし」という作家となった人。『SFが読みたい! 2008年版』の刊行予定に…

冲方丁『ばいばい、アース』

2007年の9月〜11月に1巻から3巻まで月一で出た後、最終4巻が止まっていた『ばいばい、アース』。じりじりしていたら、2月にようやく4巻が出ましたね。あとがきか解説に間が開いた事情が出ているかと思ったけど、何もなかった。 舞台は、空に聖星<アース>が…

眉村卓『司政官全短編』

会社帰りに信愛書店で発見即購入。創元SF文庫なのにSFコーナーではなく、推理小説の間に挟まっていた。分厚さで目立っていたからいいものの、見逃してしまうではないか。創元はみんな推理コーナーというローカル・ルールとかあったっけ? しかし、『不確定世…

SFマガジン編集部編『SFが読みたい! 2008年版』

ベストセラー・リストとあまり縁の無い読書生活を送っていることもあって、この手の本(?)は買ったことがなかった。しかし、これだけblogで触れられていると、やっぱり気になって購入。表紙の「早川さん」効果もあるかな……購入したのは出張帰りの羽田空港。第…

山本弘『MM9』9=Q?

こおゆう本は買っておかないと後できっと後悔するぞ、ということで年末まとめ買い時に購入。MM9作者: 山本弘出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2007/12メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 64回この商品を含むブログ (91件) を見る この世界では、怪獣に…

谷甲州『パンドラ』 久々の本格"日本SF"

年末、カミさんの実家へ娘を送り出すため東京駅まで見送りに行った際、オアゾの丸善で衝動買い。パンドラ1 (ハヤカワ文庫JA)作者: 谷甲州出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2007/11/22メディア: 文庫 クリック: 12回この商品を含むブログ (24件) を見るいや…

冲方丁『マルドゥック・ヴェロシティ 1-3』ノーバディ・ノーウェア

三巻連続刊行の後、まとめ買いして通読。勢い余って<スクランブル>三冊まで読み直してしまった。年末のゴタゴタで、ようやく感想が書けた……マルドゥック・ヴェロシティ 1posted with 簡単リンクくん at 2006.12.24冲方 丁著早川書房 (2006.11)ISBN : 4150…

飛浩隆『グラン・ヴァカンス』『ラギッド・ガール』官能・間脳・感応

<廃園の天使>シリーズ第二作目の『ラギッド・ガール』ようやく読了。短編の二本目(表題作の「ラギッド・ガール」)まで読んだところで、一作目『グラン・ヴァカンス』を読んだときの感覚を結構忘れているのに気づき、こりゃもったいないと慌てて同書から…

恩田陸『光の帝国』とゼナ・ヘンダースン<ピープル>シリーズ

ゼナ・ヘンダースンの<ピープル>シリーズはわりと好きなほうなので、同シリーズにインスパイアされて書かれたという『光の帝国 常野物語』を読むのを楽しみにしておりました。光の帝国posted with 簡単リンクくん at 2006.11.22恩田 陸著集英社 (2000.9)ISB…

山本弘『まだ見ぬ冬の悲しみも』

この本、行きつけの本屋で最初に見かけたときは、あまり買う気はなかった。というか、買うべきか買わざるべきか、随分悩んでしまった。タイトルにせよ表紙・装幀にせよ、申し分ないというか、スタンダートな印象で悪くない。なのに、一気に購入に踏み切れな…

北野勇作『どーなつ』

どーなつposted with 簡単リンクくん at 2006.10.15北野 勇作著早川書房 (2005.7)ISBN : 4150308063価格 : ¥693通常2-3日以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見るAmazon■感想記憶の一部を引き換えにしないと入れない場所。乗り手の記憶を…

田中哲弥『やみなべの陰謀』

そういえば『蹴りたい田中』って買い損ねたなぁ、タイトルだけで笑えたのに。今回は無くならないうちに買っておこう、などと本書『やみなべの陰謀』を購入したのでした。帯に、田中哲弥がもう少し勤勉なら、日本SFの歴史は変わっていたかもしれない。 大森望…

新城カズマ『サマー/タイム/トラベラー』

夏の家族旅行に持って行く本を何にしようか、と考えて、昨年の出版時に読んだ際はストーリーの先を追うのに忙しくて読み飛ばしてしまった感のある、この話を読み返してみることにした。夏だし、旅行だし、ちょうどいいかということで。サマー タイム トラベ…